キャッチコピーに、ベネフィットがわかる言葉を入れることは「売り」につながります。
ベネフィットは、大きく分けると、「機能的ベネフィット」「感情的ベネフィット」に区別することができます。
機能的ベネフィットとは、その商品が持つ機能によって得られる価値や効用のことを言います。私なりに超訳すると「その商品を使うことによって得られる具体的なハッピー」です。重要視されるのは「性能」「スペック」「原材料」などです。
いっぽう感情的ベネフィットとは、その商品を手に入れることによって得られる感情的な価値のことを言います。私なりに超訳すると「その商品を手に入れることによって得られる形のないハッピー」です。重要視されているのは「デザイン」「質感」「物語」「ブランド」などです。
現代広告の父と言われるデイヴィッド・オグルヴィも著書『ある広告人の告白』(海と月社)で、以下のような趣旨のことを述べています。
「キャッチコピーには必ず読者のベネフィットを訴えるべし」
そんなオグルヴィの代表作に高級車ロールスロイスの新聞広告があります。 住宅街の道に駐車しているロールスロイスの写真に、以下のキャッチコピーが書かれていました。
時速100キロメートルで走行中の新型ロールスロイスの車内で、一番の騒音は電子時計の音です。
At 60 miles an hour the loudest noise in this new Rolls-Royce comes from the electric clock.
この広告は、ロールスロイスの室内が静かであるという機能的なベネフィットを提示しながら、ステータスという感情的なベネフィットを刺激するものになっています。
この広告キャンペーンはアメリカ中で話題になり、ロースロイスの翌年の売上は50%アップとなりました。
クルマが感情で売れた時代
自動車は本来移動の手段です。機能的には、価格、速さ、馬力、スペース、燃費、安全性などの要素のみで購入が決まるはずです。
しかしながら、実際には、これらの要素だけで購入が決まるわけではありません。
「デザインが好き」「何となく安心感がある」「運転していてワクワクする」「ステータスを感じる」など情緒的なベネフィットによって購入が決まるケースも多いのです。
1983年、トヨタ自動車が7代目クラウンのテレビCMに使ったキャッチコピーが、あの有名な
いつかはクラウン
でした。
クラウンは当時トヨタの最上級のセダン。まだ乗っているクルマがステータスをあらわす時代で、クラウンに乗っているのは会社でも役員クラスでした。バブル前の頃、頑張って働いていたら、いつかはクラウンのような高級車に乗れるくらい出世できるかもという、高度成長時代の神話にこの1行はフィットしたのです。
いっぽう時代が下った1999年、日産自動車のミニバン・セレナのテレビCMに使われたキャッチコピーは、
モノより思い出
です。
セレナが持っていた機能的ベネフィットよりも、「家族との思い出を作る道具としてのクルマ」という感情的ベネフィットを訴求した1行です。このCMの効果もあり、セレナは大ヒットしました。
バレンタインのブルーオーシャン
ブラックサンダーというお菓子をご存知でしょうか? 有楽製菓が1994年から発売しているココア風味のクランチをチョコレートで固めた商品です。1つ30円程度と非常に安い商品ですが、ここ10年で売り上げを10倍以上伸ばしていて有名人にもファンが多くいます。
もともと大学生協を中心に売られてきたこともあり、学生たちを中心に口コミで人気が広がっていました。2006年に話題になった「生協の白石さん」に取り上げられたことで一気に知名度が高まります。北京オリンピックがあった2008年には、体操の内村航平選手の大好物として知られるようになり、売上げが急上昇しました。
そんなブラックサンダーが、2013年からバレンタインで展開しているキャンペーンがネットを中心に話題を呼んでいます。
そのキャッチコピーが以下のものです。
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