新たな売り先を探すよりも「新製品」をつくる

東京・下高井戸にある異色の創作うどん屋「JAZZ KEIRIN」。グルメ雑誌で「東京No.1のカレーうどん」と認められる名店です。店主である栂野眞二さんは40歳まで、スリランカで「タワシ王子」と呼ばれていた、若きタワシの貿易商でした。

海千山千の妖怪のうごめく、タワシ貿易の世界へ。

俺はハピネス(貿易会社)の契約社員という形で、配達など山田社長の仕事を手伝いながら、自分の事業としてタワシの商売をすることとなった。

山田社長は実におおらかな人だった。社会経験の乏しい俺がなにをしようが一切意見することなく、自由気儘に好きなようにさせてくれた。

「半端な知識は持たない方がいいよ。な~んにも知らない方がいい。右も左もわかりませんとやっておいた方がうまくいくよ。プロは素人に自分の知識を教えたがるものだからね。なにも知らない若造の方がトントンとことが運ぶものだよ」

 実際、山田社長の言うとおりだった。タワシ業界は若くて六十代、ほとんどが七十代や八十代という世界で、孫のような年頃の俺が出向けば、自分の苦労話やタワシのなんたるかについて、商談もそっちのけで延々と語って聞かせるような人ばかりだった。

「なるほど、なるほど。はいはい。うんうん」という具合に相槌を打っていれば、あちらから勝手にノウハウを教えてくれる。そんな世界だった。しかし、そんな彼等もただの好々爺というわけではなく、みな叩き上げの商売人だ。いざ値段交渉や品質の話などになると、途端に海千山千の妖怪へと変貌した。

「利は元にあり」これが商売の基本。

N社の鈴木社長が俺のタワシをはじめて買った人だ。戦前に和雑貨屋の丁稚奉公からはじめ、先代社長に認められ、その後を継いだ。高度成長の波に乗り、新築の自社ビルを構えるまでに会社を成長させた。すでに七十五歳くらいだったが、まだまだ現役だった。

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タワシ王子の人生ゲーム

栂野眞二

都内で「JAZZ競輪」という異色のうどん屋を経営する栂野眞二氏。海外で起業し、「タワシ王子」と呼ばれるほど大成功したものの、その生活を捨てて競輪の旅打ちへ・・・そしてはじめた創作うどん屋の大繁盛。普通の人の何倍分もスリリングで濃密な人...もっと読む

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mario_mandala 今夜は代官山の蔦屋書店でトークイベントあるよ。 約3年前 replyretweetfavorite