第2回】韓国勢に死角はないのか

音楽の海外展開では日本は出遅れ、K-POPを擁する韓国勢が世界で攻勢をかける。だが、日本からもようやく本腰を入れて取り組むアーティストや会社が登場し始めた。

 「明らかにレコード会社の姿勢が変わり始めましたね」

 動画配信サービス、YouTubeの音楽ビジネスで日本・韓国の代表を務めるグーグルの平井ジョン氏はこう話す。2012年秋を境にレコード会社の担当者が続々と打ち合わせに訪れるようになったのだという。

 動画配信サービスは元々、音楽を無料で拡散させるメディアとして、レコード会社にとって「疎ましい存在」。だが、今は積極的に協力関係を結ぶ方向に風向きが変わったという。一体、なぜなのか。

 一つは、違法ダウンロードの厳罰化を盛り込んだ法改正が10月1日に施行されたこと。反発も大きかった厳罰化を経たことで、逆に公式のコンテンツをネット上に開放する機運が高まった。

 もう一つは、韓国人ミュージシャン、PSYによる楽曲「江南スタイル」の世界的な旋風だ。7月公開の公式動画が、独特のダンスで話題を呼び、米国の人気ミュージシャンに取り上げられたことにより、世界中でブームとなった。

 11月に、YouTubeで歴代最多の再生回数を達成し、続く12月には再生回数10億回の驚異的な記録を打ち立てた。AKB48の人気曲でも8000万回強なのと比べれば差は歴然だろう。

 K-POPといえばKARAや少女時代が有名。だが、実は欧米では成功しておらず、「売り上げの多くを日本に依存している」(レコード会社幹部)という実態に、日本勢も余裕の構えでいられた。しかし、PSYの場合は日本を飛び越して大ブレークしたことで、日本の音楽界もあわてて動画配信の有効利用を検討し始めたのだ。

 これまで音楽業界では海外展開に際して「韓国と比べて日本は国の支援が少ない」との批判が強かったが(図参照)、PSYのヒットは政府支援だけでは説明がつかない。そもそも同曲は、国内向けの楽曲だったのが、「ネットで火が付いたのを見逃さずに、関連動画を次々出したレコード会社によるプロモーションが成功した」(平井氏)のが実態だという。

原宿を前面に海外展開
本気で動き始めた日本勢

 こうした動きを受けて、日本でも本腰を入れて音楽を海外展開する動きが起こり始めた。

 「Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅは日本的な個性を持ち、世界でも売れる存在」(小池一彦・ユニバーサル・ミュージック社長)

 Perfumeは昨年、海外展開を見据えてレコード会社を移籍し、海外公演をスタートさせた。CMなどで人気のきゃりーぱみゅぱみゅもパリ公演を果たし、個性的な原宿系ファッションも含めて、欧米からの関心が高い。

 きゃりーぱみゅぱみゅが所属するアソビシステムの中川悠介代表は「原宿カルチャーはメード・イン・ジャパンとして正統派に世界で通用するコンテンツ。(海外向けに中身を変えずに)日本と同じことをして海外で通用させたい」と狙いを強調する。

 ただ、海外での展開は一筋縄ではいかない。海外はコンサート設備や機材、スタッフ面でも日本と比べて歌手にとって理想の環境があるわけではない。これまでもそれが障壁ともなってきたためだ。

 小池社長は語気を強める。

 「韓国勢の成功の背景には強い意志があった。日本は苦労して床に這いつくばってでも成功したいという気力のあるミュージシャンはいなかった。今は本人たちの力強い志がある。そこに賭けたい」

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誰が音楽を殺したか?~Who's Killing Music?

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