30枚の「構造シート」でその後の記者人生が変わる
加藤 この本でひとつ疑問があったんですよ。
唐木 なんでしょう?
加藤 いちばん最初のプロセスとして、書き始める前に「主眼」と「骨子」をつくる、という話が書いてありました。「主眼」は「何を言うためにこの文章があるのか」という目的というかテーマの部分ですよね。「骨子」は、内容について、どんなことをどういう順番でどれくらい書くかということで。
唐木 ええ。地図でいえば「主眼」が目的地、「骨子」が経路ですね。
加藤 この「主眼」とか「骨子」という言葉、あまり一般的ではありませんよね? 単に「テーマ」とか「内容」と言うのではダメだったんですか?
唐木 や、ぜんぜんダメじゃないです。ただ新入社員向けの講義を開くようになって、最初のころは「コンセプト」とか「意図」とか「テーマ」と言っていたんですよ。ただ主眼って呼ぶと「目」、つまり「頭」であるってイメージを持ってもらいやすいんですよ。それを骨格というか「骨子」が支えている。そう説明するようになって、構造に対するみんなの理解度が一気に上がったので。
加藤 なるほどなあ。
唐木 「テーマ」とか「コンセプト」って抽象的で、ビジュアライズしづらい言葉ですよね。それより、「頭は考えられるけど、歩けないよね。考えたことを実行するのが骨なんだよ」って言ったほうが、頭の中に絵が浮かぶでしょう?
加藤 なるほど。
唐木 そんなふうに人に教えることでわかってきたことって、いっぱいあるんですよ。たとえば、賢い子ほどせっかちで一段飛ばししたがる、とか。
加藤 一段飛ばし?
唐木 上達の階段をね。本にくわしく書いたのですが、ゼミでは記事の材料が集まったところで、その文章をどのように組み立てるか可視化した「構造シート」を手書きで書いてもらうんですね。記者になって30本目の記事までは、面倒でも必ず書け、と。ところが……。
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