8月第4週の主なできごと
・作家・冲方丁 妻を殴り負傷させた疑いで逮捕 (8月24日)
・「維新の党」松井、橋下氏が離党表明 幹事長問題で抗議(8月27日)
・新国立工費上限は1550億円に——冷暖房は見送り(8月28日)
・世界陸上 ウサイン・ボルト史上初2大会連続3冠達成(8月29日)
・三重県志摩市の「萌え海女」 撤回反対側も署名(8月30日)
志摩市に非難殺到、海女萌えキャラは女性蔑視なのか?
速水健朗(以下、速水) おぐらくん、今年の夏は花火とか出かけた?
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 夏っぽいところは全然行ってないですね。歌舞伎町でホストNo.1を決めるイベントに行ったぐらいです。
速水 それ何しに行ったの(笑)。
今日は、CDも売れない、雑誌も売れないというコンテンツビジネスが危機を迎えている時代に、なんで花火は人気落ちないんだろうと思って。
おぐら みんな花火好きですよね。花火が下火になったなんて聞いたことないです。
速水 俺は、花火が大の苦手。もうほんと5分で飽きちゃうんだよ。
おぐら えー、花火いいじゃないですか。きれいな花火を見るのはもちろん、あの音とか雰囲気とか、出店とか浴衣とか、単純にアガりません?
速水 浴衣なんて3分で飽きるよ。浴衣を誉めそやす世間の風潮もよくわからないし。
おぐら 茶髪とか無造作ヘアの男が着る浴衣は僕も好きじゃないですけど。あ、でもギャルの浴衣は好きです。さて、今週のニュースにいきますか。志摩市の海女を擬人化したキャラクターが、志摩市と海女という仕事の品位をおとしめているという理由で、公式を撤回せよという署名騒ぎになっています。
速水 観光キャンペーンのために市が公式に採用したのが、17歳設定の「碧志摩メグ」という名の萌えキャラだったと。
おぐら これ、批判の主体がどこかにあるのかというと、発起人は、地元の海女の母娘なんですね。そこから始まった署名運動に「明日少女隊」という<様々な性別の第4世代若手フェミニストによる、社会派アートグループ>が加わって、ネットでも広まっていきました。
速水 ざっと批判を見ると、「胸を強調し過ぎ」、「実際に志摩の海に潜っている海女とは大変かけ離れて」いる、「女性蔑視で不愉快」などの声がある。地元の海女という当事者が反対運動をしているという問題は、地元とのコミュニケーション不足がすべての元凶であるのは間違いない。だけど、この絵が「女性蔑視」という批判の部分は、どこが?って思ってしまう。
おぐら いまどき萌えキャラをベタに「男の性的な欲望の対象」というだけで捉えるのも、ちょっと古い感じはしますね。女性にも萌えキャラのファンはたくさんいますし。一概に「エロい」だから「けしからん」と断定するのは、どうなんでしょう。
速水 すれ違いがあるんだよね。志摩は、萌えキャラを使って2次元のキャラが好きな人たちに向けた観光PRをした。でも地元の反対派は、海女のセックスアピールで観光客を呼び込もうとしているんだと勘違いした。そういうことじゃない?
おぐら 端的なセックスアピールだけではない、萌えキャラの奥行きを咀嚼できるかどうかの問題ですかね。
速水 それだけではなく、「非実在青少年問題」や会田誠のロリコン作品を巡る批判など、フェミニズムとオタクによる幼児ポルノ表現を巡る対立の代理戦争でもあるよね。このくらいの萌えキャラに「今さら目くじら立てなくとも」というのもわかるけど、この志摩市は、来年の伊勢志摩サミットの会場でもある。
おぐら 外国から見ると、確かに市がポルノを公式キャラクターに用いているのはなぜだ、ってなる可能性はあります。
速水 アメリカメディアがAKB48は性的搾取と報道したこともあったし、日本の常識が世界の標準というわけではないというのはあるね。この辺り、クールジャパン戦略を考える上でもネックになるだろうけど。
観光×性の歴史
おぐら でも実際、この萌えキャラでアニメの聖地巡礼みたいに人を集められるのかどうかは、正直なんとも言えないですよね。そんな簡単にうまくいくとも思えないです。
速水 キャラをつくった側は、成功した前例なんかも踏まえて、地域活性化のために踏み込んだものをつくったと主張している。飽和気味のゆるキャラではなく、ちゃんとその手の萌えを愛する人たちに届くものを、と。ここから考えたいのは、いまどきの「新しいツーリズム」を巡る議論の中で、「性」の問題が隠されすぎてないかっていうこと。
おぐら アニメの聖地巡礼が「新しいツーリズム」ってことですか? それと「性」の問題がどう繋がるんでしょう。
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