A.定時であがる完璧なタイムマネジメント、卓越した処理能力、会社のピンチを救う問題解決力、部下や上司から絶大な信頼を寄せられる奇跡の中間管理職、それがクッキングパパ・荒岩!
クッキングパパ・荒岩の料理への熱中ぶり、尋常ならざるこだわりを紹介してきたが、一方でサラリーマンとしての実力はいかほどだろうか。
家庭や趣味の料理を大切にしている姿だけを見ると「ワークライフバランスを大切が第一、仕事はほどほど」というタイプなんだろうな……と思いきや、実態はだいぶ違う。 荒岩は福岡の大企業「金丸産業」という商社に勤める営業マン。営業2課に配属され、連載開始当初は31歳、役職は主任である。主任とはいえ、6人の部下で構成されるチームを任されるリーダーだ。 荒岩は、新聞記者として忙しく働く妻虹子と家事を分担しており、料理は完全に荒岩の担当。息子まことに夕食を作るために5時に定時退社している。
ここまでなら「すばらしいワークライフバランス! いいなあ」と思うけれど、ときはバブルに湧く80年代、ワークライフバランスなどという言葉はまだない時代。クッキングパパとて例外なく、猛烈に働く企業戦士の運命からは逃れられないのだ。 仕事が終わっていなければまことを風呂に入れた後に会社に戻って働くし、帰宅後残業中の部下から発注ミスが発覚したという非常事態の連絡があったときには、乳飲み子の娘みゆきを背負って会社に戻ってリカバリーの指揮をとっている。その上、夕飯を食べる余裕のない部下の腹の音を聞きつけると給湯室ですばやくパスタを作ってふるまうという気遣いも忘れない。なんというパーフェクトな上司ぶり!
幼い娘を背負ってピンチの現場に登場する荒岩の頼もしさ©うえやまとち/講談社
部下の腹の音を聞き逃さない荒岩!©うえやまとち/講談社
荒岩はそのほかにも、部下6人中5人が1週間風邪で倒れるという地獄のような事態に見舞われたときも新入社員だった梅田と2人だけで毎晩徹夜上等で乗り切るという力技も見せている。荒岩はものすごいタフネスを持った超人ということがわかるエピソードだけど……みんな! マスクをしなさいよ!! (いまほど風邪予防が盛んに言われなかった1987年の出来事でした……)
あの……あまり無理しないでくださいね……©うえやまとち/講談社
タフネスだけじゃない!
会社重役の心をも惑わす「荒岩の魔性の料理」に常務は骨抜きに!
こうして、ハードワークをガッツと体力で乗り切るタフさを持ち、部下たちから慕われる荒岩だが、それだけに終わらない。その秘密のカギは、やはり料理。
荒岩は平社員のリーダー格である主任というポジションのときから、金丸産業の役員である東山常務の覚えが妙にめでたいのである。平社員に毛が生えたようなポジションの荒岩が、なぜ重役に気に入られているのか。
その秘密は荒岩の弁当にある。社内一のグルメであり、料亭やレストランにも詳しい東山常務。一流の料理を食べ尽くした東山常務のNo.1お気に入りのランチは、なんと荒岩の持ってくる「手作り弁当」。彼はいつも、荒岩の持ってくる手作り弁当をつけねらっているのである。
一流店の出前と荒岩の弁当を交換しにやってくる東山常務©うえやまとち/講談社
重役に「すきよーっ」と告らせるとは(弁当に対して)©うえやまとち/講談社
……これは……餌付け……?
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