人工知能ビジネス

人工知能で東大合格できるのか?偏差値50を超えた最新研究の今

ムック『この1冊でまるごとわかる!人工知能ビジネス』刊行に当たり、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのリーダーである新井紀子・国立情報学研究所教授を訪ねました。人工知能は人間の社会にどんなインパクトを与えるのか、人工知能社会はどんな人材が活躍できるのか、記者の質問に丁寧に答えてくれました。(聞き手は、日経ビッグデータ記者 多田和市)

人工知能「東ロボ」に東大合格させるプロジェクト

── まず率直に、新井さんのチームが研究を進めている人工知能「東ロボ」は、どこまで偏差値を伸ばすことができるのでしょうか?

新井紀子(以下、新井) 昨年まで代々木ゼミナール全国センター模試を受けてきましたが、受験した各科目ごとにだいたい偏差値が50に到達しました。東京大学に受かるには偏差値70以上は必要になるため、現状の人工知能の基盤技術では、すぐには届かないと考えています。現段階ではまず、大きな目標として偏差値60を目指しており、到達するのは想定内と私たちは考えています。

 科目によって求められる能力は違います。それは質問応答や正誤の判定、自然言語の正確な機械翻訳、状況の判定、論旨要約の妥当性判断など。それぞれのタスクごとに偏差値が60に達すると、人間から人工知能へ労働代替が急速に起きると考えています。

── 改めて、プロジェクトの狙いについて教えてください。

新井 このプロジェクトを始めた理由は、1980年代の国家プロジェクト「第五世代コンピュータ」に対する反省というか、不満からです。成果は書かれていますが、あのときに目指していたことがなぜできなかったか、ロジックをベースにした推論機構である機械翻訳や質問応答、エキスパートシステムなどがなぜ実現できなかったか、ドキュメントが残っていないんです。あれほどお金をかけたにもかかわらずという思いがあります。

 コンピューターの計算速度が向上すれば実現できるのか、あるいはデータが増えれば実現できるのか、憶測でなくて理解したいと考えております。今CPU(中央演算処理装置)がかなり速くなってきましたし、データもこれだけ集まるようになってきましたが、あのときに目指していたものがまだできていない。たまたまできていないだけでいずれできるのか、何か技術的で本質的な困難があるためにできないのか分かっていないんです。

 だから私たちは、大学入試問題というような統合的なベンチマークを広く提供して、どのような方法論でどのようなデータを使ってどのようなサーバーでどこまでできたのか、できないのか、エビデンスを残しておきたいと考えています。そのことが、日本だけでなく世界における人工知能の発展に寄与すると信じているんです。

 2016年度にはセンター入試で高得点を取り、東大の足切りに引っかからない程度まで行きたいというイメージです。そして2021年度までに東大合格を目指したい。一応そういう区切りでやっています。

── これまでのプロジェクトでどんなことが分かりましたか?

新井 今の人工知能にとって一番難しいのは深い言語処理。例えば、人間が何かを命令してロボットがそれを理解して何かをする場合、命令パターンが決まっていれば簡単です。ですが災害救助現場などで、人間が何かの指示をして、ロボットが画像認識による状況理解と合わせて問題解決する場合は難しい。そして、もっとも必要なのは深い言語処理です。

 数学や物理の問題に見られる非常に限られたフレームという縛りがある設定であっても、現段階の自然言語処理では極めて困難です。でもそこが一番伸びしろが大きいことも事実です。

 あともう1つ、人工知能に分からないこと。それは比喩です。「波のような形」ぐらいだったら、何とか分かります。しかし、「時間に追いかけられているような感じ」みたいな概念は分かりません。

仕事の半分は人工知能が代替

── これから多くの仕事が人工知能に置き換わってしまうのではないかと指摘されています。ご自身も、ホワイトカラーの半分は人工知能に置き換わってしまうとおっしゃっていますよね。

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to_2106 東ロボくんに負けちゃう大学生いっぱいいそう。勉強だけじゃないって言うかもしれないけど、何ならできる?何ならより精度の高いことができる?そろそろ考えてみてもいいんじゃね?「 約5年前 replyretweetfavorite

iwazer 未来が近づいてきてるカンジ http://t.co/L80QDNEPAY 約5年前 replyretweetfavorite

robotstart 業界ニュース: 約5年前 replyretweetfavorite