BL進化論

男同士なんて許されない……」から進化したBLたち

BLの世界でも現実社会に存在するホモフォビアが描かれることがあります。90年代のBLは「同性同士なんて許されない」などと「禁断の愛」感をあおり、ホモフォビアを是認するようなストーリー展開をするものも多く見られました。しかし最近ではそんな風潮に変化が起きていて……。ボーイズラブ愛好家で、BLと女性のセクシュアリティーズをテーマに博士号を取得した溝口さん初の著書『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』の内容の一部をcakesで特別公開します。

「お約束」で始まったのに、変化していった長編シリーズ

BLジャンルの成熟によって、物語のはじめの頃はホモフォビアを当然の前提として利用した定型BLだったのに、長期間にわたって連載されていくうちに逆に現実社会よりもホモフォビアを克服した価値観が表明されるように変化する作例もある。作家がタイムリーに同性婚法制化などの世界の情報を得ながら、では、自分が長らく描いてきた男同士カップルならどう行動するか、彼らを囲む周囲の人々や社会がどうあれば彼らがハッピーになれるだろうかと誠実に想像力をはたらかせた結果だろう。

作例としてまず『寒冷前線コンダクター』から始まる「富士見二丁目交響楽団シリーズ」(秋月こお/1994-2013)をあげる。本書第二章のBL定型分析でも例にあげた作品だが、連載開始から十数年を経た『嵐の予感』(2006)でのエピソードを見てみよう。桐ノ院圭(「攻」)と守村悠季(「受」)はアマチュア・オーケストラ「フジミ」の指揮者とバイオリニスト兼コンサートマスターとして出会ったが、この時点で桐ノ院は国内外で高い評価を得ており、守村はプロとしては駆け出しの新人。

嵐の予感 富士見二丁目交響楽団シリーズ 第6部<富士見二丁目交響楽団シリーズ 第6部> (角川ルビー文庫)
嵐の予感 富士見二丁目交響楽団シリーズ 第6部
(角川ルビー文庫)

桐ノ院が常任指揮者をつとめるMHKフィルハーモニー交響楽団(M響)の二か月後の出演をキャンセルしてきた有名ソリストの代わりに、桐ノ院が守村を推しているのだが、M響事務局長は守村の実績不足と、桐ノ院と「深い仲」にあるという噂から逡巡している。この時点のふたりはごく親しい人たちにはカミングアウトしているが、世間一般に対しては一軒家をシェアしている演奏家友達だということにしている。

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BL進化論

溝口彰子

男性同士の恋愛をテーマとして描かれるジャンル、ボーイズラブ(BL)。近年、「腐女子」という言葉の普及、アニメ化や実写映画化される作品の増加によって認知度が広がりつつあります。BLはどのように進化し、どのように社会を変えるヒントを与えて...もっと読む

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コメント

hinocchi この辺とかですね その割合は1パーセント。BLはゲイに失礼なのか? https://t.co/pmhPkhazBB 「 男同士なんて許されない……」から進化したBLたち https://t.co/x0ikLiXeV8 1年以上前 replyretweetfavorite

akikomiz cakesさんでの「BL進化論」抜粋掲載です。フジミ、ドクボク、君好きのその後から→腐女子が社会を動かす時代がやってきた! 約5年前 replyretweetfavorite