BL進化論

その割合は1パーセント。BLはゲイに失礼なのか?

男同士の恋愛を扱うボーイズラブですが、そこで描かれているのは現実のゲイの方同士の恋愛というわけではなく、読者も99パーセントが女性です。それでも、BL業界が「ゲイ男性の目線を気にする」ようになった発端を探ります。BLと女性のセクシュアリティーズをテーマに博士号を取得した溝口さん初の著書『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』の内容の一部をcakesで特別公開します。

BLを読んでいるのは誰?

十分後、倒れるようにしてやってきたナナティが、みんなから迫られて話をはじめた。(…)/エイジが雑誌だけはなくしちゃいけないって。ウチの雑誌が色んなひとの心を救ってるんだって。特にゲイのひとにとって、なくてはならないものなんだって。だから雑誌だけは続けなきゃダメって……」/正直、ゲイの読者を意識して本を作ったことはなかった。読まれていることは知っていたけれど、BLは女性作家がえがく女性向けの読み物なので、ターゲットではなかった。
鶴岡部長が席に着くと、白鹿さんからのレクチャーが始まった。(…)/「それでね、実際に彼女達の雑誌はいくらかの人達の心を救ってるんだって。ゲイの人達とか/?……/ナナティが慌てて訂正する。/「あ、あの、ウチの読者は九十九パーセント女性です。一応、少女漫画なんで。もちろん中にはゲイの方もいらっしゃいますが、表面には出てこないので……」/「あぁ、そうなんだ」/どっちでもいいけど、という代わりに白鹿さんは煙草に火を点けた。なんとなくこの誤解には、エイジからの繫がりを感じる。すげぇ、エイジ。

これは、後藤田ゆ花による『愛でしか作ってません』(2007)という小説からの引用だ。YOIカンパニーというBL出版社の編集部員たちが親会社の赤字のあおりを食らって自社が倒産しそうだと知り、自分たちが築き上げてきた雑誌やレーベルをなくさないためにと、編集部ごと引き受けてくれる会社を探して東奔西走する様子が描かれている。

愛でしか作ってません
愛でしか作ってません

視点人物はBL編集部員の佐藤珠美こと「マリリン」。最初の引用文中で話している「ナナティ」は七瀬編集主任のニックネームで、「エイジ」は彼女の行きつけの占い師。ふたつめは、ナナティとマリリンが大手出版社K談社に編集部ごとの「身売り」の相談に行き、K談社社員の「白鹿さん」から「鶴岡部長」を紹介されるくだりだ。

この小説には「フィクションであり、登場する人物・団体は架空のものです」とただし書きがついているが、帯には「実際に起こったBL業界最大手の倒産をきっかけに生まれた長編青春小説」、著者プロフィールには「2006年までコミック誌の編集者」とある。

BLに救われている「読者」とは
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
BL進化論

溝口彰子

男性同士の恋愛をテーマとして描かれるジャンル、ボーイズラブ(BL)。近年、「腐女子」という言葉の普及、アニメ化や実写映画化される作品の増加によって認知度が広がりつつあります。BLはどのように進化し、どのように社会を変えるヒントを与えて...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません