アベノミクスは「金持ち優遇」ではない!

「25年間、私は『バカ』になって投資に全力を尽くしてきました。その経験とメソッドをこの本にすべて詰め込みます」 ――日本株ファンドの「ひふみ投信」で抜群の成績を残しているファンドマネージャーの藤野英人さん。その「投資」のスキルをあますところなく公開したのが、新著『投資バカの思考法』(SBクリエイティブ)。9月10日の発売に先駆けて、藤野さんが、先行き不透明な未来でも結果を出す方法を伝授します!

あなたは、ファンドマネジャーという仕事はご存じでしょうか。

ファンドマネジャーとは、個人投資家のみなさんからお金を預かり、そのお金を使 って、投資をする担当者のことです。おもに投資先の選定や売買タイミングの決定を 行い、預かったお金を運用していきます。

私はかれこれ、25 年、投資の世界の第一線で仕事をしてきました。

株式投資で100%勝つ方法

株式市場に関わっている人たちは、誰もが「未来を見たい」と考えています。

なぜなら、「未来を見通す」ことができれば、必ず儲かるからです。

株式市場において100%勝つ方法があるとしたら、タイムマシンに乗って未来に行くことしかありません。どの会社が成長し、未来の株価がどうなるのかがわかっていれば、絶対に儲かります。

ですが、タイムマシンが存在しない以上、未来を見ることはできません。

過去、多くの投資家たちが、絶対に儲かる錬金術を手に入れようと挑み続けました。チャート分析や、ファンダメンタルズ分析といった分析方法が考え出されたのも、「未来を正確に予測したい」という欲望からです。しかし、どんなに高等数学を駆使したところで、予測は当たるときもあれば、外れるときもある。100%はありません。

それでも、世の中がどう動こうと、再現性を持って結果を出し続ける方法があります。たとえ予測が外れても、大崩れせずに立て直す方法があります。

私は、これまで磨き上げてきた「投資」、つまり本職の「仕事」の手の内をここですべて明かすつもりです。

なぜそんな企業秘密を明かすような、自分にとって不利なことをするのか。

そこには、私が直面している「危機感」があるからです。

日本人が誤解しているアベノミクスの本当の狙い

今、日本で起きていることを正確に理解している人は、どのくらいいるでしょうか。

こんなたとえ話があります。

そもそもお金とは、紙とコインにすぎません。

「この紙とコインには価値がありますよ」

と国が認めただけのことで、本質的には、「タヌキが集める木の葉」と同じものです。今の日本には、2匹の巨大なタヌキがいて、膨大な量の木の葉を貯め込んでいます。1匹目のタヌキは、「家計」です。このタヌキは、1600兆円の個人金融資産の中で、870兆円の現金預金を貯め込んでいます。2匹目のタヌキは、「会社」です。上場企業だけでも、内部留保(現預金)を200兆円も貯めています。1000兆円もの借金を抱える日本政府は、タヌキが集めた現金を動かすことで、借金を減らそうと考えました。

動かす方法は、次の2つ。

① 増税

② インフレ

すでに、消費税増税は実施されていますが、国民は増税に過敏に反応するため、なかなか税金が取れません。政府への信頼がなければ、増税はむずかしいのが実情です。

そこで、2つ目の方法です。

国民は、消費税が5%から8%に上がることには大騒ぎをしますが、為替が80円から120円になり、円の価値が下がっても、増税のときのように大騒ぎはしません。そのことに気がついた政府は、

「しめしめ。だったらインフレにするほうがいいな」

と考えたわけです。

日本銀行にお金をどんどん刷らせて、市場に出回るお金(円)の価値を下げる。これが金融政策としてのインフレです。物価が上がることで現金の価値は相対的に目減りするので、これによって1000兆円の借金の価値を下げようとしているわけです。日銀の黒田東彦総裁が行ったことから「黒田バズーカ」と呼ばれていて、円の価値は実質「3割」は下がったと言われています。

「貯金大好き」な人が損をする

では、円の価値が下がると、どうなるか。

「現金をたくさん持っている人が損をする」ことになります。

アベノミクスは「金持ち優遇」と批判されていますが、これは正しくありません。打撃を受けるのは2000万、3000万円の現金を貯め込んでいる人たちです。円の価値が3割下がった場合に、貯金100万円の人は30万円の損失ですが、貯金3000万円の人は900万円もの損失になります。

ところが日本人は、現預金が大好き。

投資も消費もしないまま現金を抱えています。投資をしないことによって、現預金が目減りするリスクを負っているのが今の状態です。アベノミクスの実体は、「金持ち優遇政策」ではなく、「株持ち優遇政策」。これからは、動かない人が損をする時代なのです。

これからの日本では、「動く人」と「動かない人」の格差がさらに広がります

2年前に投資をはじめた人は、投資金額が平均で「2倍」に増えていますから、「動いた分だけ運用益が増えた」わけです。

「動かない人」は、転職をせず、地域を離れず、狭い交友関係の中で息を潜めていて、買い物する場所も代わり映えがしません。投資も消費も消極的で、節約が大好き。現状の不満を自分の責任ではなく、「世の中のせい」にしています。

私は、彼らのことを「失望最小化」戦略の人たちと呼んでいます。

「将来には、必ず失望が待っている……」 そう考えているのが、このグループです。

では、なぜ彼らは動かないのでしょうか。

それは、「先の見えない未来が不安」だからではないでしょうか。未来に「失望」しか抱けないことで、動く勇気を持てずに、立ちすくんでいるように見えます。

投資家は、リスクの中でいかに投資を決断しているのか

しかし、未来が予測できなくても、結果を出すことはできます。

丁寧に世の中を観察して、客観的に物事を判断して、リスクを恐れず決断していけば、短期的には多少の負けがあったとしても、長期的には「勝ち続けることは不可能ではない」と、私は信じています。

その根拠として、私はこれまで、不確実性の中で生き残ってきました。

25年間の運用経験の中で、バブル崩壊や阪神・淡路大震災、オウム・サリン事件、9・11米国同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災など、不確定な状況をいくつも経験しています。私の運用する「ひふみ投信」は、「R&Iファンド大賞」を2012年から4年連続で受賞しています。私たちは日本株を専門としていて、ライバルは約500商品。ライバルがこれだけ多くひしめく中で、「4年連続」でファンド大賞を受賞する確率は、「39億年分の1」 です。

激動する社会の中で、多くのファンドマネジャーは業界から姿を消しました。けれど、私はこうして生き残り、一定の成果を出し続けています。たしかに未来を正確に予測することは、誰にもできない。けれど、それを百も承知のうえで、ファンドマネジャーは、未来を選ばなければなりません。

なぜなら、投資とは、

「今この瞬間にエネルギーを投入して、未来からのお返しをいただくこと」

「世の中を良くして、明るい未来をつくること」

だからです。

お金を生かすためにも、明るい未来をつくるためにも、ファンドマネジャーは、

「未来に立って、今を見る」

必要があります。

投資が成功しなければ、「明るい未来」は訪れない。そう思うからこそ、私は、目を凝らして、見えない未来を見ています。ファンドマネジャーが、予測できない未来をどのようにとらえているか、理解いただけたでしょうか。

ここでは、先の見えない未来に不安を抱え、身動きが取れない人のために、投資家が「何を見て、どう考え、どう決めるのか」を明かします。


「投資のスキルはビジネスに使える 」 カリスマファンド・マネジャーが明かす最強の投資論


投資バカの思考法(SBクリエイティブ)

この連載について

投資バカの思考法

藤野英人

「25年間、私は『バカ』になって投資に全力を尽くしてきました。その経験とメソッドをこの本にすべて詰め込みます」 ――日本株ファンドの「ひふみ投信」で抜群の成績を残しているファンドマネージャーの藤野英人さん。投資のスキルをすべてのビジネ...もっと読む

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コメント

Tatopon5 2年前の記事だけど今見ると確かにそうだなと> 5ヶ月前 replyretweetfavorite

mikimarufund とっても良い記事。 2年以上前 replyretweetfavorite

tamura_jp 「貯金大好き」な人が損をする 2年以上前 replyretweetfavorite

6Q_Q6 アベノミクスの正体。。。 @rheos123: 2年以上前 replyretweetfavorite