広告の天才・キリストの布教方法

大ヒットや大行列は、たった1行の言葉から生まれる! 20年前に出版された文庫本をミリオンセラーにしたPOPなど、広告・SNSなどでの大ヒット事例を分析しながら、人とお金が集まるキャッチコピーの鉄則を紹介します。結果につながる言葉の選び方をコピーライターが伝授!

 話題を売りつづける老舗遊園地

 商品やサービスに何か画期的な「ニュース」がある時には、それを直接伝えることが一番の売りになります。

 ニュースを売り続けることで、ここ数年、入場者数がV字回復中の老舗遊園地があります。それが「ひらパー」こと、ひらかたパークです。

 「ひらパー」は、大阪と京都の中間に位置する大阪府枚方市ひらかたしにあります。1910年創業と東京浅草の花やしきに次ぐ歴史のある遊園地で、大阪と京都を結ぶ私鉄、京阪電気鉄道の子会社が経営しています。96年からは公式に「ひらパー」の略称を使用して目立つ広告活動を続けてきました。
 しかしながら、少子化、レジャーの多様化などもあり、入場者数は1974年のシーズンの160万人をピークに年々減少の一途。さらに2001年、大阪市内にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が開業したことが追い打ちをかけます。数多くあった関西の老舗遊園地がどんどん閉園に追い込まれる中、ひらパーは、赤字ながらも何とか経営を続けてきました。

 そんな中、2009年度からお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一さんを起用したイメージキャラクター「ひらパー兄さん」が話題になります。特に、2010年は、小杉さんの相方・吉田敬さんとの「ひらパー兄さん選挙」は大きな注目を集めました。若者の入場者数が大幅に伸び、黒字を計上するまでになったのです。

 そんな小杉さんが2013年3月にひらパー兄さん引退を発表(これも関西では結構なニュースになりました)。次期ひらパー兄さんは誰かと注目が集まる中、同年4月衝撃的なニュースが発表されました。
 きっとまたお笑い芸人だろうという予想を覆し、何とV6の岡田准一さんが2代目の「超ひらパー兄さん」に就任するという発表があったのです。

 岡田さんは、枚方市生まれ。「小さい頃にひらかたパークでよく遊んでいた」という情報を聞きつけた広告制作者が直々に手紙を書いて口説いたといいます。
 しかも発表されたポスターは、普段のカッコイイ岡田さんのイメージとは真逆でした。昭和の漫才師風の衣装で、以下のキャッチコピーが書かれていたのです。

枚方生まれ、枚方育ち
ワイがッ ひらパー兄さんでおま!
2代目枚パー兄さん 岡田准一

 かつてオールナイトニッポンでの笑福亭鶴光師匠の挨拶を彷彿とさせるフレーズです。テレビCMも、胸に「枚方」という文字プリントされたパーカーを着た岡田さんが、コテコテの大阪弁で就任したことを知らせる衝撃的な内容でした。

 このニュースの影響力はすさまじいものでした。就任が発表された瞬間、「ひらかたパーク」の公式ツイッターのフォロワー数が一気に10倍に跳ね上がました。それまで1日3000アクセスほどだったホームページを訪れる人が殺到し、サーバーがパンクしてしまいました。
 入場者数も、就任した2013年は前年よりも1万人増。前年は100周年でイベントに力を入れていたことを考えるとすごい数字です。岡田さん効果で関西以外の地域からもお客さんがやってくるようになりました。

 さらに2年目の2014年度は岡田さんが、超ひらパー兄さんに加え園長にも就任。
 「入場者100万人を達成しなければ、園長もひらパー兄さんも解任」というストーリー性のあるニュースを取り入れたことで、ファンの応援心理をくすぐりました。
 岡田さん自身もNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』、映画『永遠の0』などの話題作への主演が続きました。その相乗効果もあって、入場者数は104万人と100万人のノルマを悠々とクリアします。前年に比べ9万人もの大幅増となり、グッズもバカ売れしました。

 ひらパーはニュースを売ることで、V字回復を遂げつつあるのです。

 ニュースづくりの達人イエス・キリスト

 ニュースを売る手法が有効なのは、はるか昔の二千年前も同じです。

 このことは1924年に広告会社の経営者であったブルース・バートンがイエス・キリストを題材に書いて、アメリカで大ベストセラーとなった“The Man Nobody Knows”(『誰も知らない男~なぜイエスは世界一有名になったか』日本経済新聞社)という本にも書かれています。
 本書は、イエスを宗教家ではなく優秀な広告マンだったという視点で書かれており、当時は宗教界からイエスを冒涜しているということで物議をかもしました。以下その本に書かれているエピソードです。

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1行バカ売れ

川上徹也

大ヒットや大行列は、たった1行の言葉から生まれる!20年前に出版された文庫本をミリオンセラーにしたPOPなど、広告・SNSなどでの大ヒット事例を分析しながら、人とお金が集まるキャッチコピーの鉄則を紹介。結果につながる言葉の選び方をコピ...もっと読む

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sahya8 ブルース・バートンの「誰も知らない男」面白そうだ。イエスは優秀な広告マンだった。https://t.co/cmORaMOrGN 約2年前 replyretweetfavorite