芥川賞作家・又吉直樹」は、文学フリマなくして生まれなかった!?【中編】

先日、文学同人誌即売会「文学フリマ」と小説投稿サイトの「E★エブリスタ(以下、エブリスタ)」が提携し、文学フリマ出店者の作品がエブリスタで読める「立ち読みカタログ」を提供するというニュースが発表されました。相反する世界観を持っているように見える両者を結びつけたのは意外にも「紙」を大事にすることでした。文フリやエブリスタだからこそ生まれる新たな創作とはどんなものでしょうか。文学フリマ事務局の望月倫彦さんと、エブリスタ取締役の芹川太郎さんの対談を前中後編でお届けします。(構成:碇本学)

前編:「新人賞」では出会えない才能が生まれる場所

ウェブサービスだからこそ「紙」に力を入れる

望月倫彦(以下、望月) 文学フリマとしては、「紙の本」に愛情がない人たちとは組めません。今回の提携のお話をいただいて最初に打ち合わせしたときに「これは面白いサービスだ」と思ったのが、目録である「E★エブリスタ YEAR BOOK」にやたら力が入っていることでした。人気作品の紹介があったり、「石田衣良さんに10の質問」という読み物があったりして、非常に充実している。電撃文庫の目録も異常なクオリティで有名ですが、それに匹敵する素晴らしい作りです。

芹川太郎(以下、芹川) 気が狂ってるんじゃないかってぐらいにしっかりと作ってます(笑)。いま年間140冊のペースで本が刊行されているので、一覧できるものは必要だろうと、名詞代わりに版元さんやメディアさんに配っています。

望月 ウェブのサービスだと「そんなもの、わざわざ紙で出さなくてもいいじゃん」ぐらいの発想をしかねないので、紙の目録にこんなに力を入れているのか、と驚きました。

芹川 僕自身が小学生や中学生のころ、本屋で新潮文庫や岩波文庫の目録をもらって帰って、「次に何を買おうか、何を読もうか」と選んでいたので、そういった体験は背景にあるかもしれません。

望月 それは読書体験を支えるけっこう大事なところですね。実際には買ってない本なのに、目録だけ眺めて何となく読んだ気になったり(笑)。僕はこの目録すごく好きです。「こことなら連携したいな」と思ったひとつの理由です。

芹川 そこまで言っていただけて、作ってよかったです……。文学フリマの出店者からは、提携発表後の反響についてはどうですか?

望月 文学フリマはこれまでにもいろいろな企画をやっているので、「新しい企画のひとつ」として捉えられている面が大きいですね。一方で、文学フリマは同人誌即売会の界隈の水準でいえばメジャー寄りだとも思われていて、「やたらとメジャーと組みたがる」とくさす声は今回もなくはなかった。たとえば「小説家になろう」さんと組んだ方が、同人誌即売会的文脈では近しいなというイメージはあったのかもしれない。

芹川 メジャー認定していただいてありがとうございます(笑)。しかし、文学そのものが世の中からするとニッチになっている自覚が僕にはあるので、その中でメジャーかニッチかという話はたいしたことではないと思います。

文学なんてもう100年以上オワコンだ
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スマホ時代の文学と作家たち—文学フリマ×エブリスタ特別対談 

望月倫彦 /芹川太郎

芸人の又吉直樹さんの『火花』が第153回芥川賞受賞というニュースに沸いた7月16日。選考結果発表のちょうど数時間前に発表されたのが、文学同人誌即売会「文学フリマ」と小説投稿サイトの「E★エブリスタ(以下、エブリスタ)」が提携し、文学フ...もっと読む

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manaview 対談構成してる記事の中編公開されました。 約5年前 replyretweetfavorite