テイラーのMVは恋愛遍歴小ネタの宝庫
前回取り上げた、4枚目のアルバム『Red』でカントリーミュージックからポップ路線へと大きくハンドルを切ったテイラー・スウィフト。その方向性をさらに推し進めた、最新作『1989』では80年代のエレクトロポップに着想を得て、アコースティックな手ざわりがほとんど排された。
『1989』からの3枚目のシングル “Style” はゆるやかな四つ打ちに牽引され、クールな温度を保っており、いかにもダンスミュージック然とした様はこのアルバムのコンセプトを象徴しているよう。サンプリングされたギターとベースの反復する音が旋回し続け、聴き手を誘惑するような中毒性がある。
この曲は「ワン・ダイレクション」(1D)のメンバー、ハリー・スタイルズとの交際がネタだと推測されている。まずこの露骨なタイトル。歌詞では、「ああやって髪をオールバックに撫でつけ 白いTシャツを着て」というハリーとおぼしき人物像が描かれ、“Take me home” と1Dのセカンドアルバムのタイトルがぶち込まれている。ミュージックビデオでは、二人の交際発覚のきっかけとなったおそろいの紙飛行機のネックレスが冒頭に登場。この曲の「あなた」が指し示しているのは誰か、挑発的にほのめかされているのだ。
前回 取り上げた “We Are Never Ever Getting Together” のビデオでも、ジェイク・ギレンホールが嫌がったハイヒールではなくフラットシューズをテイラーは履いて登場し、彼を彷彿とさせる俳優を相手役に起用し、インディレコードを抱えさせる、といった小ネタがはさまれている。メディアやリスナーの多くが、自身の「スターな恋愛」に興味津々であることを知っている彼女だからこそ、プロモーションの格好の材料としてしたたかに扱う、冷徹な視線が “Style” のビデオからもうかがえる。
セレブ界のモテ男の危険な誘惑
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