「どうして、この人はキノコ頭なの?」と問うたジャニーズJr.
黒柳徹子のモノマネを人に強いれば、100人のうち100人が早口かつ甲高い声で喋り出すだろう。北野武のモノマネを強いて、首を傾げて肩を回しながら「ダンカン、馬鹿野郎!」と声を荒らげるのは100人のうち70人くらいだろうか(「ダンカン、この野郎!」と票を分ける)。それは、タモリのモノマネを強いて「髪切った?」と真似る確率とどちらが高いだろうか(「明日、来てくれるかな?」と票を分ける)。いずれにせよ、100%にはなるまい。芸能界において、その存在が記号化されている最たる例が黒柳徹子ではないか。
「記号化」は「国民的」とは少し違う。黒柳徹子いわく、ジャニーズJr.の森本慎太郎(1997年生)は『徹子の部屋』に出演した際、「ふだん、私を見た事がない」(黒柳徹子『トットひとり』)と伝えたという。これはとっても重要な指摘である。彼はインフルエンザで学校が休校になったときにはじめて黒柳徹子を見て「どうして、この人はキノコ頭なの?」と母親に問うたという。勿論、「黒柳徹子の髪型=タマネギ頭」という情報も頭に入っていなかったのである。
黒柳徹子が髪型を変えない理由
学校に通っていて知らなかった森本と同様に、働きに出かけている人は基本的に『徹子の部屋』を放送時間中に見られない。「最近、いつ××しましたか?」というありがちなアンケートに当てはめるように「最近、いつ黒柳徹子を見ましたか?」と問うても、『世界ふしぎ発見!』を観ている人を除けば即答できる人は少ないのではないか。つまり、黒柳徹子の存在は、ペーパードライバーの免許更新のように、具体的に経験していないのに淡々と更新されている可能性が高い。
普段見なくても、限りなく高い確率でそのディテール込みで認知されているのは、彼女が反復を好むからだろう。黒柳徹子は自分自身を「一度何かを決めたら、飽きない性分」と分析し、「テレビの出演料と同じぐらいのお金をいただけるのなら、『職業・袋貼り』でもいい」(黒柳徹子『徹子ザ・ベスト』)と語っている。40年目に入った『徹子の部屋』、その間ずっとタマネギ頭の髪型を変えないのは、もし髪型を変えてしまった場合、視聴者が自分の髪型ばかりに気をとられてしまい、その日のゲストの話に集中してもらえないからだという。「髪切った?」の『笑っていいとも!』が32年。髪型を変えない『徹子の部屋』は40年を超えた。それで何かを証明できるわけでもないのだが、タマネギ頭は変わらぬ美学を突きつけてくる。
「突然ものが出っ張ってくる」映画
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