私のからだは私のものじゃなかった

身体の変化は、誰しもがさまざまな形で経験するもの。その過程で牧村朝子さんは、身体の“ある部分”の存在を知らなかったがために、自分は死ぬのではないかという恐怖を感じたそうで……。今でも自分の一部だという気がしないという、“ある部分”にまつわる経験を牧村さんが語ります。

※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。

今夜死ぬんだ、と、9歳の私は思った。

おトイレに行ったら、パンツが赤く染まっていた。その赤は、絵の具の赤ともクレヨンの赤とも違う、血の色の赤だった。びっくりして声が出なかった。おしりや内股にけがをしていないか探してみたけれど、どこも切れてはいなかった。

母親の顔が脳裏によぎった。「おパンツを洗濯機に入れる前には、自分でちょっと手洗いしてから入れてちょうだいよ」。いつもそう言う母に、こんな状態のパンツは見せられない。そう思って頭の中でいっしょうけんめいパンツを手洗いしてみたけれど、想像の中の血は石けん水に溶けて赤く赤く広がっていくばかりだった。こんなの、洗い落とせない。

トイレットペーパーで股間を拭いてみたら、やっぱり血がついていた。血を止めようと、私は何度も何度もトイレットペーパーを取り換えながら股間を押さえつづけた。それでも血はずっと止まらなかった。この血がおしりの穴から出ているのか、おしっこの穴から出ているのか、それだけでも突き止めようと思ったけれど、見るのが恐くてうまくいかなかった。体が震えはじめた。

このまま血が止まらなくて死ぬんだ、と私は思った。
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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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oberon_metatron 私も生理が早かった。先に知ってたけど、母に聞かれたとき「知ってたらダメ」な気がして始めて聞く振りしてた。自分の身体なのにな。パートナーがいる今だからこそ、何か寂しさを感じたりもする。 https://t.co/SXU20k8m5G 21日前 replyretweetfavorite

mosarama1 どストレートな記事だが、性別問わず、読む価値がある。考えさせられる。私も未だに、自分の体なのに、分からないことだらけだから。 21日前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu 初潮までに月経について教えてもらえず、私がその日にどんな思いをしたか、WEBメディア「cakes」で短いエッセイを書いてます。今夜は無料公開にします😉https://t.co/cehcvImbx5 性教育について「これを教わって… https://t.co/ZDojk7FmNa 21日前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu 「自分の身体の一部なのに、見たり触ったりしてはいけないように思えた。そこについて話すことすら、ためらわなければならないような空気が流れていた」…連載エッセイ人気回、18時まで無料公開ですhttps://t.co/SKqbiQoWQF https://t.co/VYQrqv90Cr 1年以上前 replyretweetfavorite