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今夜死ぬんだ、と、9歳の私は思った。
おトイレに行ったら、パンツが赤く染まっていた。その赤は、絵の具の赤ともクレヨンの赤とも違う、血の色の赤だった。びっくりして声が出なかった。おしりや内股にけがをしていないか探してみたけれど、どこも切れてはいなかった。
母親の顔が脳裏によぎった。「おパンツを洗濯機に入れる前には、自分でちょっと手洗いしてから入れてちょうだいよ」。いつもそう言う母に、こんな状態のパンツは見せられない。そう思って頭の中でいっしょうけんめいパンツを手洗いしてみたけれど、想像の中の血は石けん水に溶けて赤く赤く広がっていくばかりだった。こんなの、洗い落とせない。
トイレットペーパーで股間を拭いてみたら、やっぱり血がついていた。血を止めようと、私は何度も何度もトイレットペーパーを取り換えながら股間を押さえつづけた。それでも血はずっと止まらなかった。この血がおしりの穴から出ているのか、おしっこの穴から出ているのか、それだけでも突き止めようと思ったけれど、見るのが恐くてうまくいかなかった。体が震えはじめた。