「イケメン」ホームレス予備軍との出会い
「家出してきたんです。どうも仕事とかうまく見つからなくて」
ワタナベくん(仮名)はそう言うと底抜けに明るく微笑んだ。
2011年5月、新宿中央公園の炊き出しで彼とは出会った。聞けばまだ22歳。年下の人の相談にのるのは初めてで緊張する。パーマのかかった茶髪、おしゃれなパーカー。今風のイケメンという感じだ。
「え~と、ボランティア希望ではなくて、相談なんだよね?」
「はい。実家を出て東京に来たものの仕事が見つからなくて。いま借りているマンスリーにいられるのも今週いっぱいだし。相談先を探してるうちに、ここにたどり着いたんです」
なるほど。若者ホームレス予備軍とでも言うべきだろうか。
「何か事情があったの? お金にも困っている感じだよね」
「はい。父に二度とうちの敷居をまたぐなって追い出されたんです。もともと暴力的な人なんですけど、最近は特にひどくて。殴られることもしょっちゅうだし。手元の5,000円が全財産です。あと5日で泊まれるところもなくなっちゃうし、困ったなあって」
笑いながら話してはいるが、切迫度は高いようだ。
「わかりました。詳しく話を聞かせてください。立ち話もなんだし、近くのファミレスにでも入りましょうか」
「あ、え、え~と」
ワタナベくんは、急にモジモジしだした。
「どうかしましたか?」
「あの、僕、お金が……」
不注意だった。見た目にはまったくわからないが、彼はいまお金に困っているのだ。