6人に1人が貧困という現実に「なまあたたかさ」を感じてほしかった —インタビュー後編

「数字や記号ではなくてその人の顔が浮かんでくる。それってすごく大事なんです」
20代にして、日本の貧困問題の解決を目指すNPO法人「もやい」理事長を務める大西連さんが、『すぐそばにある「貧困」』を刊行しました。1000人以上の生活困窮者の相談にのってきた著者が語る、誰かの人生に関わるということの意味。「6人に1人が貧困」という日本の現実について。核心に迫るインタビュー、いよいよ後編です。

他者の人生と向き合うことで、自分自身が試される

— その人の人生に関わる、立ち止まって考えるとありましたけど、「まえがき」にもありましたね。「普段なんともなしに過ぎていく日々のあれこれや、すれ違ったきりもう二度と会うことのない誰かの人生に、ちょっとだけ勇気を出して踏み込んでみる」と。

大西連(以下、大西) そうなんです。でもこれって、僕自身と向きあうことでもあったんです。「あとがき」に書きましたが、相談にのる、その人の人生に関わるっていうことは、自分も見られるということなんですよね。その人の人生を知る中で、自分の振る舞いや生き方が試されるというか。自分のことを考えざるを得なくなるんです。本当に深い話を聞くので。

— 非常にパーソナルですよね。

大西 生い立ちから職歴、生活歴、それに病歴とか受刑歴とか虐待歴まで。こんなの普通は聞かないし、話さないレベルの話を知ってしまう。それを知った上で何をするかが試される。しかも、場合によっては自分が相手より立場として強くなってしまう。例えばですが、役所に同行するかしないかを、こちらが決められてしまう。権力になるんですよ、何もないはずの若者なのに。そういう場にいる怖さはありました。ただ、もちろんその中でやっていくことの楽しさ、面白さ、やりがいのようなものもあるから、いろんな感情がない交ぜになっているんですよね。それをできるだけ正直に書きました。生活困窮者支援をやっていると、どうしても尊いだとか、聖人君主だとか言われかねないですから。

— 意識高い人がやっているんだろうなと勝手に思っていました。

大西 そう思っている人はいるだろうし、もちろん、実際、そういう尊敬できる人もいますが。

— この本の中の大西さんはそういうのとはまた違いますよね。

大西 僕は意識高い系ではないので(笑)。

— きっかけが「たまたま友人に誘われて新宿中央公園の炊き出しに行って、そのままずるずると」っていうのも面白いです。

大西 だからこそ本当に悩みながらやっています。本当にこれでいいのかって。それは今も同じですが。

— 悩みながら向き合い続けた5年間だったのですね。

「6人に1人が貧困」という数字に「なまあたたかさ」を持たせる
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
すぐそばにある「貧困」

大西連

「僕たちと貧困を隔てる壁は、限りなく薄く、もろく、そして見えづらくなっています」 20代にして日本の貧困問題の解決を目指すNPO法人「もやい」理事長を務める大西連さんが、日本に蔓延する見えない貧困の実態に迫ります。貧困の背景に...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

yuzuru_D4U 「なまあたたかさ」は「火傷する高熱」の隣りだと思うの(・・; 2年以上前 replyretweetfavorite

makikotavn 社会の価値観を変えることの大切さ…読んでみたい。 2年以上前 replyretweetfavorite

mari_lunarium 『子どもは親の差別をよく見ている』象徴的な、具体的な一片。 2年以上前 replyretweetfavorite