迷わないためのルールを決める。迷ったら? 新しい方を選ぶ。
—— やりたいようにお店を作ったら、結果的にうまく行ってしまった。だからこれで正解だったんだと言うことですよね?
栂野眞二氏(以降、栂野) そうです。結果論として今「うまく行っている」と思えるから、それで正解だったんです。能書きは関係ない。なにかを引き当てたヤツが勝ちなんです。それが「運」ですね。
俺は本にも書いたんですけど、実はストレスに弱い人間で、迷ったり悩んだりということが、ものすごく苦手なんですよ。だから「迷ったら新しい方を選ぶ」と、あるとき決めてしまったんです。そうやってサイコロを振るように生きようと決めたわけです。そうすれば、迷ったり悩んだりしなくて済むからね。
—— たしかに大胆である反面、栂野さんて実はかなりストレスに弱いというか、繊細ですよね。本にも「気が小さくて、小さいことにくよくよする」とありました。
栂野 ある部分ではすごく大胆だと思います。でもある部分ではものすごく繊細だとも思う。大胆な部分て、もう気分が乗ってバーッと行っちゃう部分なので、自分ではそれが大胆かどうかなんて考えてないと思うんですよ。周りの人が見て「あいつよくあんなことするね」と思ってるだけでね。
逆に繊細な部分って多分、自分がじっくり考えてしまう部分だから、なんで俺はこんなことをくよくよくよくよ、いつまでも考えてるんだろうって自分が嫌になったりするじゃない。だからこそよく覚えているんですね。そんな気がする。大胆なヤツって、実は信じられないくらい繊細だったりするんですよ。
—— そういう自覚があるからこそ、「迷ったら新しい方を選ぶ」とか、ルールを決めちゃったわけですね。
栂野 そう。迷わなくてもいいように、ルールを決めてしまった。例えばね、俺がこの店をはじめたとき、不動産屋に薦められた一件目の物件がここなんですよ。それで、広さも間取りもちょうどいいし、もうここでいいやって即決しました。物件は探せば他にもっとあったはずだけど、選択肢が増えて迷いはじめたら、俺の場合は切りがないんですよ。
でも、その決断はある意味で間違いだったんですよ。この下高井戸って、雨が降ったら外を歩く人もいなくなっちゃうような普通の住宅地だし、飲食店が難しい街って言われているというのは、後から知ったんですね。そういうことをよく知らずに選んでしまって、苦しみもした訳です。
ところが結果としては、ここで良かったんです。店もこうして成り立ってるし、例えば俺の本を作ってくれたMさんとは、ここだからこそ出会って、だからこそ今俺がここでこうして話をしている訳ですよね。これが例えば笹塚だったり明大前だったり、よそで店をはじめていたら、Mさんとは会ってないかもしれないじゃない。そうしたら、この話自体が無いんですよね。どうすれば何が起こるのかが予め分からない。だから面白いんですよ。結局こういう結果になったのは、俺が下高井戸で店を開いたからなんです。「勘」が働いたということです。
人生で重要なのは「大局観」と「勘」だ。
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