男同士は「許されない」ままがいい?
三浦しをん(以下、三浦) 渋谷区で同性パートナーシップ条例が成立したり、アメリカの最高裁の判決でアメリカ全州での同性婚が認められたりして、日常的にもLGBTに関するニュースを聞くようになりましたね。
溝口彰子(以下、溝口) そうですね。渋谷区の条例というのは、すごくざっくり言えば、任意後見書類をかわして登記していることと、共同生活の合意契約を公正証書で作っている人たちに対して、区長がその関係性を尊重してね、と言ってくれる、ということ。つまり既存の制度を利用した二人に対して、さらにお墨付きを与えてくれるだけなんですよね。別に何らの公的な資格を渋谷区が与えてくれるものではない。でも、それによって、表立ってしゃべりやすくなったという点で、本当に大きな前進だったと思います。
三浦 そういう同性愛などの多様な関係のあり方が「当たり前」になっていくのは、喜ばしい流れですね。でも、ちょっとびっくりしたことがあって。
溝口 どういうことですか?
三浦 「世の中の認識として同性愛が当たり前になってしまったら、BLは成り立たなくなるんじゃないですか」と聞かれたことがあったんです。
溝口 えーと、つまり、「男同士なんて許されない」とか「男同士なんておかしい」といった前提とか葛藤が生まれなくなるから、そういうBL作品が楽しめなくなるってことですよね。