一年間だけ恋人になる

今回の「ワイングラスのむこう側」は、不倫のお話です。bar bossa店主・林伸次さんがお客さんから聞いた、お互い家庭を持つ人同士の、一年間の恋人関係。不倫とは、倫理から外れることを意味する言葉ですが、外れた先でその恋人同士は、なにを見てなにを感じてなにを残したのでしょうか。

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

「不倫」ってどう思われますか?といきなり聞かれても、不倫が好きな方ってちょっと悪いオジサンを除けば、そんなにいないですよね。でも、先日常連のお客様から、こんなお話を聞きました。

30代半ばくらいの綺麗な女性なんですが、前から僕が書いた文章を読んでくれていて、突然カウンターでこう言われました。

「林さんはいろんな恋の話を集めて書いているんですよね。もし良ければ私の恋の話も聞いてもらえますか」

その夜は外は雨で、お客さまも少なかったので、僕はグラスにリースリングを注ぎながら「ぜひ、聞かせてください」と答えました。

彼女はリースリングに口をつけると、「やっぱりリースリングって気品があるのに、チャーミングなところもあって、こんな女になりたいですね」なんて言いながら話し始めました。

「私、実はこの間までダブル不倫してたんです。彼には中学生の娘さんが一人いて、私にも小学生の息子が一人います」

会社員の彼女が、知り合いに紹介されフリーのスタッフとして手伝いをお願いしたのがその彼だったそうです。そのプロジェクトが終わればもう会うこともないはずの関係だったのに、二人で密に働いているうちにお互いなんとなく気になってきた、というわけです。それで普段他の仕事ではほとんどしないのに、打ち上げと称して二人で飲みにいくことにしました。

「しばらくふたりで飲んでいて気が付きました。私は彼と出会うタイミングを完全に間違えたんだなって。お互い結婚する前に出会えていたらって。その時口には出さなかったんですけど、あとで彼から同じことを言い出されて驚きました」

そういって彼女は笑いました。

「こういう話って林さんはよく聞いていますよね。私たちも、今お互いの夫婦が倦怠期でちょっと刺激的な恋愛がしたいだけなんじゃないか、なんてことも考えたんです。でも、そのあと段々わかっていくんですが、映画を見たり小説を読んだりした時、笑うところも、感動するところも、嫌いなところも一緒なんです。心が読まれてるんじゃないかとまで思ったこともありました」

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この連載について

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

MizzouYoshiko 小説や映画になりそうなエピソード。  2年以上前 replyretweetfavorite

283vawa いい話だと思う。 約4年前 replyretweetfavorite

mayumiura こんな彼女の 約4年前 replyretweetfavorite

funifunyyy https://t.co/f2j8fngsPq ウワーー萌えたこれは既婚者ホモだ( ; ; )( ; ; )( ; ; )既婚者まなと〜のダブル不倫だ…( ; ; )( ; ; ) 約4年前 replyretweetfavorite