プロメテウスのように、両陣営から叩かれて
深澤真紀(以下、深澤) 岡田さんの学生時代はもうインターネット全盛だし、しかもデジタルに強いSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)に通っていたのに、職場としては出版社、しかもそのなかでもアナログで保守的な会社を選んだでしょう。
編集者をしたいなら、当時からすでにウェブ媒体もあったし、もっとデジタルに親和的な会社も多かったと思うのですが。
岡田育(以下、岡田) これも「人生カウンターカルチャー」な話につながるんですけど……私がSFCに進学したのは、親がアナログ人間で、家にパソコンを買ってもらえなかったからなんですよ。当時、日本ではまだ珍しかった「24時間インターネットし放題」のキャンパスに憧れて、ただそれだけでした。でも大学院へ進学した頃から、またその反動がきちゃったんです。なんか、アナログの禁断症状みたいになって……気づくと神田神保町の古本屋でものすごく読みにくい細かい文字の岩波文庫なんかを大量に買っていて。
深澤 パラフィン紙をバリバリ言わせながら(笑)。
岡田 そうそう(笑)。原点が図書委員だったこと忘れてた! という。過剰に行き過ぎては反動で対極に出戻る、繰り返しですね。出版社という、アナログな世界を目指したのはそんな時期のことです。
深澤 でも出版社に入ってみたら、思っているよりずっとデジタルオンチばかりだったでしょう。
岡田 お察しの通りです。「サイトのURLを手書きのFAXで送る」とか、共用のパソコンがフリーズしたのをちょちょっと再起動させただけで「電脳空間から来た魔法少女」みたいな扱い受けるとか、そういう時代でした。
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