​ウィリス、ビッスン、チャンのSFトーク

翻訳・解説・エッセイ・コラムと、SF界のオシゴトを縦横無尽にばりばりこなす超人・大森望氏。氏の〈SFマガジン〉誌上の連載コラム「大森望の新SF観光局」がcakesに出張! 今回はコニー・ウィリス、テリー・ビッスン、テッド・チャンといったSF界のそうそうたるメンバーがポッドキャストで語った様子をお伝えする、「新SF観光局」の第23回を再録します(SFマガジン2011年9月号より)。

 ここ数年、外出時はつねに首からiPod nanoをぶら下げてるんですが、音楽はほとんど入っていない。じゃあ何を聞いているかというと、もっぱらAMラジオのポッドキャスト配信。月~金の午後ワイド、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」「夕やけ寺ちゃん活動中」と、TBS「小島慶子キラ☆キラ」「荒川強啓デイキャッチ」、それに土曜深夜の「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」と月曜深夜「伊集院光 深夜の馬鹿力」。その他、たまに聴くのが、半期に一度「文学賞メッタ斬り!SP」の芥川賞・直木賞予想でお世話になっているラジオ日本「ラジカントロプス2.0」とか、TBS「DIG」とか、「小島秀夫の『ヒデラジ』」とか。こんなにラジオを聴くのは高校時代以来かも。

 ポッドキャストで配信されているのはもちろんラジオばかりではない。寝床で聴くのはもっぱら落語ですが(「お台場寄席」とか)、以前この欄でも書いたとおり、英語圏ではSF関連のインタビューや朗読がたくさん配信されている。筆頭は、“オーディオSFマガジン”と銘打つ「StarShipSofa」。メインは短篇の朗読だが、作家インタビューの音源も豊富で、ここ一年ぐらいの登場ゲストを見ても、ラングドン・ジョーンズ、アダム゠トロイ・カストロ、スティーヴン・R・ドナルドスン、ルーシャス・シェパード、アーシュラ・K・ル・グィン、ピーター・F・ハミルトン、フレデリック・ポール&ジャック・ヴァンス、グレッグ・ベア、ジェイムズ・モロウ、アレン・スティール、ジェフリー・フォード、マイクル・ムアコック……という具合。多彩な顔ぶれの肉声を聴くことができる。

 今年からは、老舗〈LOCUS online〉の談話室「Locus Roundtable」でも、談話室ナビゲーターのカレン・バーナム(SF研究家・書評家)が司会/聞き手をつとめる座談会・対談/インタビューのポッドキャスト配信をスタートした。

 三月に配信されたのが、コニー・ウィリスとテリー・ビッスンの対談。思い出のSFとそれぞれの創作作法についてざっくばらんに語っていて、これがたいへんおもしろい。内容の一部をざっと紹介すると、冒頭はこんな感じ。


──最初に、短篇を書くことと長篇を書くことから伺いたいんですが。

ビッスン(以下B) いまはもっぱら短篇を書いていて、長篇は数冊しかないけど、実をいうと、僕の場合は、伝統的なSF作家の進む道とは逆コースでね。まず長篇を書いて、そのあと短篇を書くようになったんだ。デイヴィッド・ハートウェルの依頼で第一長篇(Wyrldmaker, 1981)を書いて、たしか千五百ドルもらった。短篇は一本も書いたことがなかったんだけど、そのあと知り合ったエレン・ダトロウから、〈オムニ〉に短篇を書く気はないかと訊かれて、興味はあると答えたら、原稿料は千八百ドルだと(笑)。それから短篇を書くようになった。

ウィリス(以下W) わたしは伝統的なコースのほうで(笑)、まず短篇から書きはじめた。最初の長篇の『リンカーンの夢』を書いたのは、短篇作家としてかなり長くキャリアを積んだあとだったわね。

 SFにとって理想的な媒体は短篇だと思う。長篇だと世界全体を書かなきゃいけないでしょ。短篇の場合は、未来や異世界を鍵穴から覗くようにして書くことができる。リアルな未来じゃくて、象徴的な未来でかまわない。SFの短篇は思考実験でいいのよ。


 このあとはヴォネガットの短篇「ハリスン・ヴァージロン」をめぐる議論になるが、長いので割愛。さらに、アメリカの短篇小説市場(頂点は〈プレイボーイ〉)の話をはさんで、往年のSF話に花が咲く。

 ビッスンがなにかSFのタイトルを挙げるたび、ウィリスがいちいち食い気味に反応し、機関銃のような勢いで思い出話をまくしたてるのがめちゃくちゃおかしい。年齢的には、ビッスンが今年69歳で、ウィリスが65歳。おじいちゃんとおばあちゃんが楽しげに昔のSF話に興じるのを聴いていると思わず口元がゆるみますね。

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大森望の新SF観光局・cakes出張版

大森望

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