稲田豊史 /牧村朝子
フランスではオタクは「キモくない」?【第5回】
日本では、何かと「キモい」と批判されがちなオタク文化。とは言いつつ最近は、特殊な嗜好であったはずのオタク文化が、一般化・カジュアル化してきたようにも見受けられます。このように「一般」と「特殊」の線引きがあいまいになってきた世の中では、自分というものの「軸」をしっかり持たなければなりません。そんな「自分は自分」を教えてくれたのも、『美少女戦士セーラームーン』という作品でした。
フランスでは「オタク文化」はプラスイメージ
稲田豊史(以下、稲田) 僕は男ですし、『セーラームーン』放映当時はもう10代後半でしたから、当時番組を観ていることは、一部の友人を除いて周囲には言えなかったんです。クラスの女子にバレたら確実にキモがられますからね。だから割と肩身の狭い思いをして、その後もずっと秘めていました。ところが、ここ2、3年の間に仕事で関わった何人かのアラサー女性から、『セーラームーン』を観ていたという話題が出るようになったんです。そこではじめて、「実は僕も観てました」と言えるようになりました。
牧村朝子(以下、牧村) それまでは、タブー意識があったんですよね。大人や男性が『セーラームーン』を観ること、ひいてはオタク文化に対して。
稲田 放映20周年記念の動きもあったし、国民的名作アニメみたいな扱いになったことも大きいでしょうね。言える空気になって良かったなと。
牧村 けっこうフランスだと、そこのタブー感があんまりないんですよね。
稲田 そうなんですか。
牧村 まぁ、いろんな価値観がありますしね。そもそも、日本のように、「オタク文化」に対して、ちょっとキモイもの、アウトカーストなもの、リア充できないからオタクするんだよ、っていうネガティブなイメージがないんですよ。
稲田 昔からないんですか?
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この連載について
稲田豊史 /牧村朝子
アラサー女子=セーラームーン世代の心理を『美少女戦士セーラームーン』の作品解釈とともに明らかにし、話題となっているのが、『セーラームーン世代の社会論』です。自身もセーラームーン世代であり、セーラームーンには一家言ある牧村朝子さんと、著...もっと読む
著者プロフィール
1974年生まれ。編集者、ライター。映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社後、キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。映画をはじめとしたコンテンツレビュー、エンタメビジネス記事、ルポ、コラム、書籍編集などを手掛ける。
著書は『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)。おもな編集書籍は『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)、『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著/キネマ旬報社)。
「サイゾー」「ビジネス+IT」「SPA!」「女子SPA!」などで執筆中。
【WEB】http://inadatoyoshi.com
タレント、文筆家。2010年、ミス日本ファイナリスト選出を機に芸能界デビュー。2012年渡仏、フランスやアメリカでの取材を重ねる。2017年独立、現在は日本を拠点とし、執筆・メディア出演・講演を続けている。夢は「幸せそうな女の子カップルに"レズビアンって何?"って言われること」。出演『ハートネットTV』(NHK総合)ほか、著書『百合のリアル』(星海社新書/2017年、小学館より増補版刊行)『ハッピーエンドに殺されない』(青弓社/2017年)ほか。愛称は「まきむぅ」。