どうしても塾に行きたくない。そんな子供がどうするかというと、まず塾をやめたいと親に直談判する。で、当然これがすぐに認められるはずもないので渋々通い続ける。そうすると、通ってるだけでも立派でしょ?みたいな気持ちになるので全く勉強に身が入らず、その結果「塾に通ってるのになんで成績上がらないのよ」と親から叱責される。
このように、絶望のスパイラルを迎えた子供が見せる行動として、一般的に次の3つのパターンが考えられる。まず1つ目は、塾に行くフリをして行かないというよくあるパターン。行ってきます、と平然と家を出て友達の家とか、コンビニとか、ゲームセンターとか、全然違うところで塾が終わる頃まで時間を潰すのである。いずれは絶対にバレるが、それまではのびのびと楽しい時間を過ごせるので満足度も高い。だが確実にバレる。2つ目は、塾に行くには行くが、傍若無人に暴れまくるというものである。と言っても現代っ子は昔のヤンキーのように暴力沙汰を起こしたりはしない。大声で無駄話をしてみたり、歩き回ってみたり、授業を妨害するわけである。純粋に、おもしろきことのなき塾時間を多少なりともおもしろく、というよく言えば建設的な気持ちが働いている可能性もあるし、こうすればいずれ辞めさせてもらえる(辞めさせられる)という打算が働いている可能性もなきにしもあらず。いずれにしても周りには迷惑な行為である。で、残るもう1つというのは、対照的に誰にも何の迷惑もかけることがない。ただ、本人が生きたまま屍になるんである。何も聞こえない、何も感じない。言われるままに塾通いを続け、成績が上がらないと親からお小言を言われても、はい、はいと淡々と聞き流す。
私にも経験がある。一旦嫌になった塾って、蛍光灯の明るさとか、匂いとか、壁の質感とか、どうでもいい細部まで全部嫌になるのだ。そんなところに週に2回も3回も通わなきゃいけないっていうのでうんざりしていた。 子供って大変だな、大人は気楽なもんだよ……と、言ってあげたい気持ちは山々だけどその実、大人になっても同じことは繰り返される。無情な世の中だ。 逃避・反抗・生ける屍。塾をやめられない子供とまるで同じことをやっちゃうのが、結婚に嫌気がさした世の夫たちなのである。
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