フランス人が一番好きなセーラー戦士は誰だ?【第1回】

アラサー女子=セーラームーン世代の心理を『美少女戦士セーラームーン』の作品解釈とともに明らかにし、話題となっているのが、『セーラームーン世代の社会論』です。自身もセーラームーン世代であり、セーラームーンには一家言ある牧村朝子さんと、著者の稲田豊史さんの対談が実現。第1回は日仏で開催した「どのセーラー戦士が好き?」アンケートの結果発表から。両国の結果の違いを分析しながら、文化の違いに触れていきます。

いよいよ、『セーラーチーム』の日仏投票結果発表!

牧村朝子(以下、牧村) 『セーラームーン世代の社会論』、大変楽しく拝読いたしました。本日は稲田さんとセーラームーン談義ができるということでわくわくしてやってきました!

セーラームーン世代の社会論
セーラームーン世代の社会論

稲田豊史(以下、稲田) そう言っていただけてうれしいです。牧村さんはcakesの連載で「セーラームーンになれなくても」というエッセイを書かれていましたね。よろしくお願いします。

— 今回は、対談の開催にあわせて、フランスのポータルサイト「Manga News」と、『セーラームーン』のフランス語版を出版した会社である「PIKA」の公式facebook、そして日本のcakesで「好きなセーラー戦士を教えてください」というアンケートをとりました(※)。まずは、フランスの投票結果から見てみましょう。※今回はセーラームーン、セーラーマーズ、セーラーマーキュリー、セーラージュピター、セーラーヴィーナスの「内部太陽系戦士」のみに絞ったアンケートを実施。

— セーラームーンがダントツ1位で、それ以外はわりと似たり寄ったりでした。日本では、誰が一番でしょうか。牧村さんと稲田さんの予想を、5位から順番にお願いします!

牧村 私が予想したビリの子のファンがイラっとしたら申しわけないんですけど……。「5位ヴィーナス、4位ジュピター、3位セーラームーン、2位マーズ、1位マーキュリー」で予想してます。子供のころの変身ごっこ基準で考えました。何のキャラが一番奪い合われたかっていう視点です。だから、フランスの結果が、セーラームーンが1位というのはうなずけるかも。

稲田 僕も4位と5位は、牧村さんと一緒で、「5位ヴィーナス、4位ジュピター、3位マーキュリー、2位マーズ、1位セーラームーン」です。cakesと牧村さんのTwitter経由でのアンケートなので、回答者の属性によってもかなり左右されるとは思うんですが。

なぜだか日本で嫌われているのは……

— では、日本の結果を見てみましょう。

稲田 4人が拮抗してて、セーラームーンだけ激しく人気がない!

牧村 コメントを見ると、「ウラネプ(=ウラネス、ネプチューン)が良かったけど、選択肢になかったから、この中ならマーキュリーかな」みたいな層もいますね。フランスと逆の結果でおもしろいな。

稲田 うさぎがガキ過ぎるとか、子どもっぽいとかって意見がありませんか? 日本だと。

牧村 あるある! 「うさぎガキすぎる問題」!(笑)

稲田 アニメの主人公としては定番の、「ドジでおっちょこちょいで、キュートな子」という属性ですが、セーラームーン世代の間ではわりと聞きますよね。「うさぎにイラッとする」って。

牧村 私、マーキュリーが好きなんですけど、マーキュリー好きな身としては、「セーラームーンのせいで、マーキュリーが危ない目に遭っている」みたいなのはあるんですよ。「亜美ちゃん死す(※)」みたいな回があったでしょ? 「亜美ちゃんがこんな危ない目に遭ってるのに、ピーピー言ってんじゃねーよ!」って思ってた。※「無印」の最終回の前話である、第45話の「セーラー戦士死す!悲壮なる最終戦」の回。セーラームーン1人を残し、他の4戦士は戦死するという衝撃的な回である。

稲田 セーラームーンはすぐ泣きますしね。

牧村 そうそうそう。彼女は周りの4戦士から守られるポジションなので。

稲田 あと、子どもっぽい理想論を振りかざす時がありませんか?

牧村 「戦いたくないの!」「傷つけたくないの!」みたいな。

稲田 シリーズも後半になってくると、だいぶ精神的な成長が見られるんですけど。シリーズの最初ほうのうさぎはひどい。「戦いたくないし、みんなが死ぬのもイヤ」って。どうしたいんだ、お前は(笑)。

日本で言う「セーラームーン世代」は、フランスでは「ドロテ世代」と呼ばれる

稲田 だけど、フランスではセーラームーンがダントツ1位なんですね。

牧村 年齢層とかは日本とあまり変わらないはずなんですけど。セーラームーンは1993年から97年まで、フランスで放映されていたんです。全話放映されているわけじゃないんですけど、そこでファンがついたと思う。

稲田 それなら放映時期はだいたい日本と一緒ですね。

牧村 今回稲田さんの本では、「セーラームーン世代」って言ってますけど、フランスではこの世代のことを、「ドロテ世代」と呼ぶんです。なんでかっていうと、「クラブ・ドロテ(※)」というアニメを放映する番組があって、そこでセーラームーンが流れていたから。「セーラームーンが好き」というよりは、「クラブ・ドロテが好き」「あの番組を観れば、アニメが観られる」ってことで観てたらしいです。※フランスの歌手で女優のドロテが日本のアニメ・特撮を紹介する番組。子どもたちの評判を呼んだが、親である大人世代からは厳しい批判にさらされた。

稲田 「クラブ・ドロテ」では日本以外のアニメも放映してたんですか?

牧村 いいえ、日本のアニメがメインだったそうです。ただ、その時は日本のアニメというのがすごく見下されていたというか、あまり価値を置かれていなかったというか……、「子どもダマしのもの」って思われていたので、あまり丁寧には編成されていなかったらしい。例えば、このあいだ第90話を放送したのに、今度は第32話を放映しているよね、みたいな。

稲田 海外で放送される日本のアニメにありがちなやつですね。

牧村 そう、順番がバラバラ。それだけじゃなくて、声優の配役とかも。ウラヌスは大丈夫でしたけど、ウラヌスみたいな見た目の人が出てくると、とりあえず男の声優をあてるとか。台本を読んでないんですよね。ちょっとバカにされてる感はあったそうです。

稲田 牧村さんの奥さまは?

牧村 観てたみたいですね。それこそ、「ドロテ世代」なので。今回のアンケートは私からフランス側にお願いしたのですが、フランスのマンガ関係者は、開票前に「セーラームーンが一番人気がないんじゃないか」って言ってましたね。フランスでは求められない女性像だから。日本の女性だと、こういう「可愛さ」「未熟さ」「守ってもらいたい」っていうので、サバイブする人がいるじゃない。
 でも、フランスではそんな人はいないし。とても象徴的なのが、日本語で「オバサン」と「おねえさん」と呼ばれるのでは、「おねえさん」のほうがいいこととされるでしょ? フランスだと「マダム」と「マドモアゼル」の違いがあって、それは、結婚しているか、もしくは、結婚できる年齢に見えるかどうかで分かれるんですが、「マダム」と呼ばれるほうが「いいこと」ってされるんですよ。つまり成熟していると見られるほうがいい。日本とは真逆なんです。だから、さっきの編集者の人は、セーラームーンが一番人気ないだろうって予想したんでしょうね。うさぎちゃんみたいな主人公が出てるマンガは、フランスでは売れないだろうし、私は売り出さないと言ってました。

稲田 へぇ〜。日本側の投票者って、若干マニアックな層が多い気がしますね。cakes経由なので、ある程度、文化系のリテラシーがあるのかもしれませんね。

vol.2「『恋の痛み』を知るヴィーナス、『お色気』担当のマーキュリー?」につづく

連載「『セーラームーン世代』を語り尽くす!」もお楽しみください。


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この連載について

セーラームーンから「女子」を読む!

稲田豊史 /牧村朝子

アラサー女子=セーラームーン世代の心理を『美少女戦士セーラームーン』の作品解釈とともに明らかにし、話題となっているのが、『セーラームーン世代の社会論』です。自身もセーラームーン世代であり、セーラームーンには一家言ある牧村朝子さんと、著...もっと読む

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コメント

makimuuuuuu 亜美ちゃん好ち🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰 https://t.co/5FZSKga4ul https://t.co/sisZuZiaQo 10日前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu フランスと日本とで、それぞれ一番好きなセーラー戦士を(内部太陽系戦士で)投票してもらった結果なんですけど、これ日本は百合界隈からの票がめっちゃ入った可能性だいぶあるな? https://t.co/T2IrCGOVQo https://t.co/4wKvY1u8VI 約1年前 replyretweetfavorite

hyodoshinji 意外やセーラームーンに 4年以上前 replyretweetfavorite

veryprettybetty 日本ではマーキュリーが1位、セーラームーンが最下位っていう結果は予測できた。私も5人の中ならダントツ亜美ちゃんが好きだった。 5年弱前 replyretweetfavorite