吉田羊を「ミステリアス」と評するミステイク

昨年、『HERO』の美人検事役で一躍注目を集めた女優・吉田羊。現在放送中の月9ドラマ『恋仲』では女性社長役を演じるなど、キャリアウーマン役を演じることが多い彼女ですが、その起用には、メディアの「ミステリアス女優」という括り方が影響していると武田砂鉄さんは分析します。

あの頃からの理解者だったと言い始めたりする人

「インディーズの頃から知っている」「バックダンサーだった頃から目を付けていた」「端役だったけど確かにあの頃から存在感は突出していた」という報告や評定は押し並べて疑わしい。音楽でも映画でも演劇でもそれを専門に論じている人のもとには、シーンの最新情報が否応にも五月雨式に入ってくる。接する情報に対して、それぞれ判断せずに淡々と流して、ひとまず存在の把握だけを済ませておく。そんでもって、後々突出した活躍を確認した時点で、その流れを逆流し、かつての「把握」を「評価」に高める歴史の改ざんを行い、あの頃からの理解者だったと言い始めたりする。

この原稿の下調べのために、吉田羊についての論評をいくつか探し出してみたが、いわゆる芸能評論家と呼ばれる人たちが、「自分は前から目を付けていた」方面の言葉を漏れなく差し込んでいて、改ざんの気配がプンプン漂う。しかしそれが、当人の記憶を好都合に逆流した上で行なわれる改ざんである以上、外野から指摘することは不可能なのである。僕自身、彼女のことは2010年『外科医 須磨久善』の医師役で演じていた頃から「何か惹き付けられるものがある」と評価してきたのだが、そんな評価はもちろんウソである。

彼女の年齢を特定してみようとする働きかけ

昨年の木村拓哉主演『HERO』に抜擢されて以降、ドラマ、バラエティ、CM問わず頻出している吉田羊は、突出して目立つようになった人が必ず出るバラエティに押し並べて登場し、場の特性に合わせて弾けながらも、基本的にはその都度代わり映えしないトーク内容を披露してきた。「どうして年齢を公表していないんですか?」「オファーしていただく側に、自由に年齢を捉えて欲しいんです。公表してしまうと、どうしてもその年齢に合った役どころばかりになってしまうから」という会話を3度は聞いたが、この取り組みは、確かにオファーする側には有効なのだろう。

逆に、伝える側のメディアは困る。なぜって、それなりに年を重ねた女優がセーラー服を着ればそのギャップを記事にし、まだまだ若い女優が母親役に挑戦すればそのギャップを記事にしてきたのだから、年齢非公表の扱い方に抗体が無い。先述のトークの殆どは、「学生時代、好きだったドラマは?」などの質問を吹っかけて、彼女の年齢を特定してみようとする働きかけに向かった。年齢を明かさないという一点を貫くだけで、紹介文やテロップ等では「ミステリアス女優」と銘打たれる。生年を明らかにしない理由を繰り返し丁寧に明らかにしているのだが、それでもミステリアスだという。

キャリアウーマン・吉田羊と大塚久美子社長
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コメント

tutti_2501 吉田羊様が...。 3年以上前 replyretweetfavorite

dankeitatekawa つくづく頭のいい人の文章だなあと思った。@cakes_PR: 【読まれています】あの人気女優が年齢を公表しない理由とは? ” 4年弱前 replyretweetfavorite

drops2012 純愛の時からずっとモヤモヤしていた事を文章にしてくれる人がいた! 4年弱前 replyretweetfavorite

tsutayaeureka 記号の付けられ方が篠原涼子と似ている 4年弱前 replyretweetfavorite