大作ラッシュの夏、快進撃の恐竜たち—『ジュラシック・ワールド』

マッドな奴らや巨人やシュワちゃんが暴れまわるこの夏の劇場に、あの世界一有名な恐竜映画まで参戦! スティーヴン・スピルバーグ製作によるアクション・アドベンチャーシリーズの第4弾にして14年ぶりの新作、本日公開となった『ジュラシック・ワールド』を映画ライターの渡辺麻紀さんがレビュウします。

(C)Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment


14年ぶりの大型シリーズ最新作あらわる

『マッドマックス』や『ターミネーター』、そして『ミッション:インポッシブル』と、今年の夏は20世紀に始まったハリウッドの人気シリーズの最新作が揃い踏み。そんななか、凄まじい快進撃を続けているのが『ジュラシック・パーク』シリーズの最新作『ジュラシック・ワールド』だ。5月の全米封切り3日間だけで2億ドルの興収を上げ、8月には6億ドルを突破。『アバター』『タイタニック』に継ぎ歴代3位につけている。

 『ジュラシック・パーク』はマイクル・クライトンの同名ベストセラーの映画化。1993年に公開されたその作品はスティーブン・スピルバーグが監督して大ヒットした。97年には同じくスピルバーグの手によって『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』が作られ、01年にジョー・ジョンストンが『ジュラシック・パークIII』を発表。それから14年ぶりにシリーズ4作目である本作が登場したのだ。

 監督に抜擢されたのは『彼女はパートタイムトラベラー』というオリジナルのSF映画の小品を作っただけのほぼ新人コリン・トレボロウ。スピルバーグはこのSF映画の「ラスト」を気に入って彼に白羽の矢を立てたというので観てみたのだが、正直、この大作を任せられるほどの才気は感じられなかった。ところが本作は、筆者のそんな評価を大きく裏切る面白さ。しかも、“ラスト”がとんでもなくキマっている。スピルバーグの目に狂いはなかったことになりそうだ。


『ジュラシック・パーク(上・下)』(ハヤカワ文庫NV)

「パーク」から「ワールド」へ、加速するサスペンス

 さて、本作の舞台は“ジュラシック・ワールド”。“ジュラシック・パーク”を創造したジョン・ハモンドからその権利を買い取ったインド人の実業家が“パーク”の部分を“ワールド”に変更して開園。多くの観客を集める大人気スポットに育て上げていたというところから物語は始まる。ちゃんと1作目を意識した設定、そののちのストーリーになっているのだ。

 実のところ、このテーマパークが開園したのは本作が初めて。ということはつまり、一方にはパークが提供する恐竜アトラクションに熱狂する観客と、そのまた一方では暴れだした恐竜と、彼らを制御しようとする関係者という対照的な構図が生まれ、サスペンスが加速する仕組み。しかも、今回は恐竜の”エサ”がいっぱいだ。パニック度も一気に加速することになる。


(C)ILM / Universal Pictures and Amblin Entertainment

 そこで問題になるのは、その暴れる恐竜たちである。シリーズでお馴染みの人気者、獰猛なラプトルが4頭登場するが、知能が高いといわれている彼らにはそれぞれ名前がつけられ調教師が飼いならそうとしているという設定だ。もちろんT-レックスや水棲の巨大恐竜モササウルス、『III』に出演していた翼竜プテラノドン、そして今回、遺伝子組み換えで創造された恐竜、極めて凶暴で賢いインドミナス・レックスが初登場する。このハイブリット恐竜は、より刺激を求めようになった観客に応えるために開発されたという設定で、自然の法則さえねじ伏せようとする人間の傲慢さへの皮肉が込められている。そして、すべての始まりこそが、このインドミナス・レックス。彼が、その知能で檻を逃げ出し園内を大パニックに陥れるのだ。

 スリルとサスペンス。オリジナルに対するオマージュと人間の傲慢さへの皮肉。そして新種の恐竜の登場と、ヒット要素はてんこ盛りである。また『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で大ブレイクしたクリス・プラットがラプトルの調教師を演じ、彼のヒーローっぷりにも期待度は高まる。


(C)Universal Pictures and Amblin Entertainment

「お約束」をきっちり守った爽快なラスト

 が、この品揃えだけなら、おそらく歴代10位くらい。では、何がこの作品を歴代3位に上り詰めるほどのスーパーヒットに導いたのかといえば、トレボロウがシリーズのお約束をきっちり守ったところにある。

 まず「恐竜はモンスターじゃない。動物だ」という点。トレボロウ曰く、ラプトルの調教はスピルバーグのアイデアで、最初は彼らと人間は意志の疎通が出来ることになっていたという。とてもスピルバーグらしいが、これをトレボロウは「心を通わせているのかどうか判らない」というふうに変更してみせた。なぜなら「あくまで彼らは動物だから」である。彼がこの点を死守したおかげで、後半のサスペンスが俄然アップしたのだ。

 その後半。インドミナス・レックスの暴走によってプテラノドンも解放され、次々と空中から人間をぱっくり。園内を逃げ惑う人間たちの図はパニック映画そのものとはいえ、これはあくまで恐竜映画。トレボロウはそれも忘れなかった! つまり、主人公は人間ではなく恐竜たち。それもハイブリットの最新鋭のヤツじゃなく、古くからいるヤツら。ハイライトでは彼らをこれまでにないくらい上手に使い、これまでにないくらいハイテンションで爽快なラストに仕立て上げている。ここまで恐竜に惚れ込んだのも初めて。彼らがこれほどかっこよかったのも初めてだ。実際、このラストをまた味わうためにもう一度、劇場に行きたくなるくらいだったのだ。

 日本ではやっと公開されるが、果たしてどんな数字が出るのか? とりわけ、世間を席巻している”巨人”との闘いが気になるところである。



『ジュラシック・ワールド』(Jurassic World/2015/アメリカ/125分/配給:東宝東和/全国ロードショー中)監督:コリン・トレボロウ/出演:クリス・プラット、ほか


SFマガジン

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渡辺麻紀

公開中/もうすぐ公開の、注目のSF映画をレビュウします。

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コメント

tukinekosan1 いかなきゃε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘ https://t.co/iJQ1iES8Lw 4年以上前 replyretweetfavorite

Hayakawashobo 【本日公開】マッドな奴らや巨人やシュワちゃんが暴れまわるこの夏の劇場に、あの恐竜映画が参戦! 4年以上前 replyretweetfavorite