歴史的な出来事や、そこに絡んだとされる人物たちの姿を、わたくしたちはどのように覚えているでしょう。よほど古い話であれば、その出来事を描写した言葉の印象と、いくつかの絵画などに頼りますね。家康、秀吉、信長それぞれの顏は、有名な肖像画によって記憶しておりますものね。
近現代になれば、わたくしたちの記憶を支えてくれるものは、写真ということになってきます。第二次世界大戦のさまざまなシーンなどは写真によって記録され、それが後世を生きる人の記憶の素になっております。たとえば「原爆投下」という事件に対しては、禍々しいきのこ雲のイメージが脳裏に浮かんだりするように。
歴史上の人物の姿も、ますます写真によってイメージが形づくられるようになります。夏目漱石は憂鬱そうに顔を傾けている姿で。正岡子規は後頭部のシルエットが印象的な横顔によって。芥川龍之介は、いかにも悩みごとを常に抱えていそうな和服姿でわたくしたちの記憶に収まっていますよね。
東京・品川で、戦後の風俗や人物の様子がありありと感じ取れる写真の展覧会がはじまっております。キヤノンオープンギャラリー1・2で開催中の「林忠彦写真展 カストリ時代1946-56&AMERICA1955」です。