メディアと人間の想像力の関係
—— 『弱虫ペダル』はアニメや舞台、小説など、さまざまなメディアミックス展開をしている作品です。渡辺さんは「メディアミックスには影響を受けないようにしている」とよくおっしゃっていますが、ご自身が考える、「漫画だからこその魅力」を教えてください。
渡辺航(以下、渡辺) 僕は、いつも「漫画が一番おもしろいメディアだ」と思って描いています。漫画って、すごく自由で想像力を働かせられるメディアなんですよ。声も色もついていないけど、全部読者が自分で想像できる。たとえば、好きな作品がアニメになったときに「このキャラクターってもっと高い声じゃないかな」と思うことってありませんか?
—— そうですね。「この声がピッタリだ!」と思うこともありますし、やはり声優さんの熱演を聞くうちに「この声しかない!」と感じることもありますが。
渡辺 それって、漫画を読んでいるときに、頭の中で声を想像しているということ。なかなかこういうおもしろさのあるメディアはないですよ。想像力の分、漫画ってすごくたくさんの情報量が入れられるんです。「アニメのファンです!」というファンレターを僕宛てにいただくことも多いのですが、ぜひあわせて漫画も楽しんでもらいたいですね。
—— たしかに漫画を読んでいると、キャラの声も聞こえますし、自転車の速さも感じます。1枚の絵で、一瞬にも永遠にも感じられたり……。アニメとは違う種類のテンポや疾走感があるなと。
渡辺 最初から音がないのに、「その瞬間、世界から音が消えた」という表現もできてしまうのがおもしろいですよね。一方、「弱虫ペダル」の場合は、アニメも僕自身楽しく見ています。1話30分という中で展開するメディアですが、アニメは「アニメとしての」完成形を見せてくれていると僕は思っています。劇場アニメも劇場アニメのノウハウがあって、そこで完成形を出してくれると思うので、楽しみにしています。
—— 全然違う表現として、「舞台」のメディアミックスもあります。『舞台 弱虫ペダル』は「ペダステ」という愛称で親しまれ、今やなかなか公演チケットがとれないという人気ぶりです。ペダステについてはどう考えていらっしゃいますか?
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