A.多忙な母カツ代に代わって料理を始めた荒岩。巨大な壁となって立ちはだかる母を荒岩は超えられるのか!
プロ顔負けの料理の腕を持ち、おいしい料理で皆を喜ばせる荒岩。誰もが「おいしいーっ」と大絶賛する荒岩の料理を、決して褒めない人物がひとりだけいる。荒岩の母・カツ代だ。荒岩の料理道のカギを握るのがこの母・カツ代なのだ。
ちなみに、母カツ代のルックスはほぼ荒岩の女性版で、柔道家のようなガッシリしたボディに鋼のようなアゴを持つ。いや、この母親の強靭な肉体とアゴを荒岩が受け継いだといほうが正確だろうか……とにかくそっくり。カツ代を偶然見た荒岩の上司がカツ代のことを「荒岩、お前女装の趣味があったのか」と驚いたほどだ。
心身ともに「強き女」である。
荒岩の母・カツ代。上司が思わず勘違いするほどそっくり ©うえやまとち/講談社
母カツ代は荒岩が幼い時に夫を亡くし、病院の賄い婦として懸命に働いて2人の子供を育てていた。時はおそらく昭和40年代、女手ひとつで子供を育てるのは今以上に大変だったに違いない。忙しい母には子供たちと一緒に夕飯を食べる時間はなく、幼い荒岩と7歳下の妹の味知の夕食はいつも買ってきたパンだった。
現在のクッキングパパの「家族の愛、温かい食卓、家族みんなでご飯を食べればハッピー!」という世界からは想像できないほど、荒岩の幼少期の食生活はハードなものだったのだ。
荒岩が小学校6年生のある日事件が起こる。「妹の味知大爆発事件」である。毎日毎日同じようなパンばかり、母のいない家で兄弟2人だけで食べる夕食に寂しさを募らせた味知は、この日とうとうフラストレーションが大爆発、パンを兄に投げつけ、部屋に閉じこもってしまう。
2コマ目の、妹の怒りを受けての小6の荒岩の分別が泣ける ©うえやまとち/講談社
妹の寂しさを知った荒岩は自発的に初めて台所に立ち、冷蔵庫の余り物を使って厚焼きの具入り卵焼き「ぶっ飛び卵焼き」を作る。お兄ちゃんの作った卵焼きを食べて妹は大喜び!その笑顔が忘れられず、荒岩は毎日のように母に代わって台所に立つようになるのである。……荒岩、めちゃくちゃいいお兄ちゃんだ。妹のために自分から料理を作るなんて……。カツ代さん!あんたの息子は立派だよ! そんな立派な兄の手料理で、未知のフラストレーションは癒えていく……。しかし、母カツ代はそんな荒岩の料理を絶対に褒めないのである。「ありがとう」も「おいしいよ」もなし。ちょっとひどいんじゃないの……!? と思ってしまうところだが、実はこれにはカツ代なりの理由があるのだ。
妹のため、けなげに初めての料理をつくる荒岩。私がお母さんだったら褒めちぎるところだが……
©うえやまとち/講談社
「まだまだやね」「がまんして食うてやりようとたい」厳しすぎる母の言葉で温厚な男・荒岩がついに……!?
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