ビジネスエリートが脳の病気を患うという現実
—— 菅原さんの肩書は、作業療法士ですよね。
菅原洋平(以下、菅原) はい、簡単に言うと、患者さんのリハビリテーションをお手伝いするのが仕事です。
—— 「リハビリ」と、菅原さんの現在の研究テーマである「脳」は直接的にイメージが結びつかないのですが、なぜ脳の研究をされているのですか?
菅原 あまり知られていないのですが、もともと作業療法士は脳を扱う仕事なんです。一般の人がいちばんイメージしやすいのは、病気でいうと「脳卒中」ではないでしょうか。
—— どういう関わりがあるんですか?
菅原 脳卒中は、脳の血管が破裂して体の片方が麻痺するという病気ですが、麻痺した手足の機能を回復させるお手伝いをするのが作業療法士の仕事です。そのためには、手足を治すのではなく、手足を動かしている脳を治すために脳の働きを知ることが欠かせません。
—— もともと脳には興味があったのですか?
菅原 大学では解剖学や生理学を学んでいたのですが、そこで「解剖」にハマってしまったんです(笑)。
—— 解剖の魅力は、どこにあるんですか?
菅原 たとえば、たとえば、手の付け根には小さな骨が8つ並んでいて、絶妙なブリッジをつくっている。その形以外にあり得ないというような絶妙なバランスを保って、手を動かしています。
—— なるほど。
菅原 解剖を通じて、人間が体を動かすために骨や筋肉、臓器といったものが非常に合理的に形成されていることがわかり、「人間の体はうまくできているのだなあ」と惹きこまれました。
—— そう考えると、人間の体って不思議ですよね。
菅原 そうなんです。同じように脳も解剖すると、脳の神経の配列も、実に合理的にできている。この脳のつくりを知ることで、人の力を最大限に引き出すことができるのではないか、と、とても興味深く感じました。
—— その後、実際に脳のリハビリテーションに従事することになるんですよね?
菅原 はい、民間病院の精神科に勤務したあと、国立病院機構の神経内科でリハビリテーションに携わることになりました。
—— どんな病院だったんですか?
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