品田遊 前編「人生に一切、波風を立てたくない。タニシみたいに生きていたいけど」

twitterで不思議なことをつぶやき続け、大喜利にでれば並み居る強豪を押しのけ優勝。謎の男、“ダ・ヴィンチ・恐山”が、“品田遊”名義で『止まりだしたら走らない』を上梓しました。
おびただしい他人が一同に会する中央線の車内で繰り広げられる群像劇。その人間模様をすくい取る品田さんの視線はどこに向けられているのでしょうか。

新しい才能が全貌を現す瞬間を目の当たりにする—。それはいつだってワクワクする体験だ。このたび、文学の世界に、ひとつの大きな才能が降り立った。名を、品田遊という。

ツイッターの世界で広く知られる存在の「ダ・ヴィンチ恐山」が、ペンネームを変えて小説に挑んだのである。

電車をモチーフにした連作短編小説作品『止まりだしたら走らない』は、cakesでも掲載中。日常のほんの隣にある非日常へと読む者を連れて行ってくれるこの作品、いったいなぜ、いかに、どんなおもいのもとで生まれてきたのか。

ツイッターや大喜利の世界では、ダ・ヴィンチ恐山の名はつとに有名ですが、このたび小説に手を染めたのはなぜだったのですか?

「何か書けば」。編集者の方にそう言っていただいたのが直接のきっかけですね。書けるのか、僕に、ほんとうに? と思いながらも打ち合わせをしていたら、テーマを限定したほうが書きやすいんじゃないかと教えてもらって、その場で電車、それも中央線でいこうということになりました。

 とくに電車に思い入れがあるわけじゃないです。ぜんぜん「鉄ちゃん」でもないし。中央線沿線に住んではいますけど、ふだんの行動範囲は家の周囲だけで、移動はもっぱら自転車。電車の路線なんかをちゃんと覚えたのは最近ですよ。

電車に乗っているとだれしもおもう「あるある」ネタが満載なので、よほど電車好きなのかとおもいましたが。

 電車内では知らない人がこんな近くにいる、これは異様じゃないかということ。なんで自分はここに立って、知らないおじさんの耳の裏をこんな間近な距離で見ているのか。こんな人生、理不尽すぎる! と感じていたりした。そういうことを題材にしたら、電車をテーマに小説を書くこともできるかもしれないとおもいました。

今作は連作短編のかたちをとっていて、すべて中央線の路線と電車に乗り合わせた人たちの話になっている。よくぞこれだけ題材が集まりましたね。

 いちばん最初に書き上がったのは「採点」でした。たとえばいったんサヨナラをした人と線路を挟んだホームで向かい合ってしまったとき、その気まずさは半端じゃないなとおもったところから、話をつくっていきました。

 考えていたのは、人との距離感みたいなものです。よくおもうのは、この人は友だちだといっても、それぞれ個人の時間を過ごしているときは、他人として生きている。いつどんなときだって友だちとしての近い距離を保っているわけじゃない。その距離が、たまになんとも言いようもない中途半端なものになることがある。会う予定もないのに街でばったり出会ってしまったときとか。そういうときに相手を意識することの気持ち悪さ、いたたまれなさについて書こうかとおもったんです。

品田さんは、ばったり人と出会ったらどんな具合ですか。

 わたし自身は、街で同級生を見かけたら、必ず逃げます。話すことがあれば連絡するのに、いざ偶然出会ったからといって話すことを探さないといけないなんて、その状況を考えると怖ろしい。

 相手はわりといろいろ訊いてきます。元気か、とか。ああ、がんばっていろいろ質問しているんだろうなとおもうと、いっそう悩ましくなる。それでも、わたしからは何も言いません。

助け舟を出して会話の糸口とかつくったほうが、その場は丸く収まるかと……。

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止まりだしたら走らない

品田 遊
リトル・モア
2015-07-08

この連載について

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文学者の肖像

山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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