第4回】安くて早くて便利を実現する アマゾンの正体は物流企業

アマゾンは単なるインターネット通販企業ではない。「安くて早くて便利」を実現している会社の本質は世界トップクラスのITと物流システムにある。

 「日本は1000円以上買い物したら送料無料にする」

 「いや安過ぎる。2000円以上にしろ」

 2001年、アマゾンが日本で書籍販売を開始して間もなく、日本法人と米本社間では「送料無料」というサービスの値決めで綱引きが行われていた。

 再販制度のある日本では書籍の値段が決められており、米国のように「4割引き」といった安値攻勢は取れなかった。そのため、日本側は送料の値引きに目を付けたのだ。結局、日米の間を取り「1500円以上で無料」となった。

 当時を知るアマゾン関係者は「1000円だと赤字だったが、とにかく成長第一という意識だった」と振り返る。このときの判断が、価格差のつかない書籍でも「安い」という印象を与え、消費者の心をつかむことになった。

 日本進出から12年たち、書籍だけではなく家電やファッション、アダルトグッズまで国内5000万を超える商品が並ぶ巨大なインターネット通販サイトに成長した。

 月間の利用者は4800万人と国内最大級(コムスコア調べ)なのも、「安くて早くて便利」というコンビニのような感覚で買い物ができるからだ。

 サイトの特徴はシンプルな「商品カタログ」ともいえる作りにある。目当ての商品になるべく早く簡単にたどり着けるような仕組みを整え、ワンクリックで決済まで完了する。トップページでは商品の閲覧履歴や購入履歴から、好みに合ったお薦めの商品を紹介してくれるリコメンド機能もある。

 しかも、送料は基本的に無料で、当日中に荷物が届くサービスまで用意しているのだ。

 こうしたサービスは「地球上で最もお客さまを大切にする企業」という経営理念があるから。重要なのはとにかく安く商品を提供することだ。

 そのためにアマゾンは、まず安さを売りにしてサイトに集客する。すると、商品の売り手がぞくぞくと集まり品ぞろえが増える。今度は集客力を武器に低コストでの仕入れを実現し、さらに安い商品を顧客に提供、集客につなげていくのだ。

 それが好循環を生み、米国で1995年に書籍販売を始めてから、毎年2桁成長を続け、いまや売上高は世界で約3.8兆円(480億ドル)の規模に達した。国内事業は、非公表だが売上高が5000億円規模に到達したとみられる。

 恐ろしいのは、最終利益率を3%前後に抑えつつ、余った利益をすべて投資に回してさらなるサービスの実現を図っていることだ。

 しかも、あらゆる意思決定の場で「それは顧客が求めるのか」という問いを課し、時に取引業者に値下げを徹底的に求めるので、どこか狂信的にも映る。顧客にとってサイトの使い勝手がいいのもこうした理由があるからだ。

 この理念の実現は、世界に冠たる自社のネット技術が支えている。例えば、ネット上の他社の価格を自動で収集して、比較、値決めまでできる。顧客や商品データの蓄積も進み、好みに合った商品を薦める機能も充実している。クラウドソーシングの技術は政府や有名企業も認めるほどである。

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2000年代から本格化したネットショッピング業界にあって、2大巨頭となった楽天とアマゾン。それぞれのビジネスモデルを分析、サービスの優劣を判定する。※この連載は、2012年12月15日号に掲載された特集を再編集したものです。Illus...もっと読む

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