伝説的なロックバンド『グレイトルフル・デッド』
『グレイトフル・デッド』をご存知だろうか? 1965年にサンフランシスコで結成された伝説的なロックバンドで、ヒットチャートとは無縁ながら、ライブでの即興演奏を売りにスタジアム・ツアーを行い、アメリカの国内のコンサート収益では毎年1、2位をとりつづけていた。1995年にリーダーのジェリー・ガルシアが亡くなった後はメンバーのソロ活動が中心になっているが、ファミリーとしてゆるく繋がりながらの音楽活動は続けていた。そして、バンド誕生から50周年の今年、中心メンバー全員が集まって『グレイトフル・デッド』として最後のコンサートツアーをすることになった。
シカゴのソルジャー・フィールドでの3日にわたるコンサートの2万枚のチケットは一瞬のうちに売り切れてしまい、チケットマスターの新記録を作った。コンピュータの前で待ち構えていたのにオーダーを入れることさえできなかったファンは多く、それ自体がメディアで話題になったほどだ。
コンサートの前には、なんとオバマ大統領からも特別メッセージが届き、「アメリカの音楽を素晴らしいものにしているのは、クリエイティビティと情熱、人々を集める力。それを具現化した象徴的なバンド」とグレイトフル・デッドを讃えた。
日本ではほとんど知られていないバンドだが、グレイトフル・デッドはアメリカを語る上ではそれほど重要な存在なのだ。「デッドヘッズ」と呼ばれる熱狂的なファンには、オバマ大統領だけではなく、ビル・クリントン、アル・ゴア、ラリー・ペイジ(Googleの共同創業者)、エドワード・ノートン(俳優、映画監督といった有名人も多く、いまは亡きスティーブ・ジョブズもその一人だった。
最後のコンサート会場にも、バンドのTシャツを着てシーンに溶け込んでいる政治家、俳優、作家、起業家、大企業の最高責任者の姿が見かけられた。
ファンを魅了するのは音楽だけでなく、グレイトフル・デッドの特殊なコミュニティだ。ヒッピーカルチャーの先導者だったグレイトフル・デッドは、自分たちがファンと作り上げたコミュニティをとても大切にしていた。デッドヘッズはコンサートが始まる何時間も前から会場に集まり、「シーン」という村祭りのようなパーティを繰り広げる。ここでは政治経済的にまったく異なる背景の人々が、ファン同士として同等に暖かく相手を受け入れ、自由に繋がり、助けあう。