劇場版、3か月連続公開。
2015年10月2日(金) 『屍者の帝国』(監督・牧原亮太郎 制作・WIT STUDIO)
2015年11月13日(金)『虐殺器官』(監督・村瀬修功 制作・manglobe)
2015年12月4日(金)『ハーモニー』
(監督・なかむらたかし/マイケル・アリアス 制作・STUDIO4℃)
『虐殺器官』『ハーモニー』の内容に触れています。未読の方はご注意ください。
■感情にうったえかけるものがうける、とはよく言われるが、数字から見てもどうも本当らしい
伊藤計劃は「SFとしてすごいから売れた」わけではない。
ある作品が「売れるかどうか」に関わる要素と、「SFとしてすごい」と感じさせる要素はそれぞれ異なる。
……と前回書いた。その論拠はなにか。
2013年の7月から8月にかけて、東京都内の学習塾と私立高校、私立大学の講師の協力を得て、中高大学生272人に対して私が実施した、無作為抽出の無記名アンケートがある(中学生65人、高校生178人、大学生26人。なお、統計学的に厳密な調査・分析ではない)。
その中で、「あなたが一番ハマっている作品の、どんなところが好きですか?」という質問を選択式(複数回答可)で回答してもらった。
選択肢は、笑える、切ない、エグい、こわい、かわいい、かっこいい、テンション上がる、アツい、マネしたくなる、いっしょに楽しめる、ネタになる、集めたりレベル上げが楽しい、なごむ、おどろく/びっくりする、謎めいている、知的、もやもやしたきもちをすくってくれる、明るい、病んでいる、エロい、ドキドキする、ヤバい、泣ける、壮大、身近、萌える、落ち着く、別世界、その他[自由記述]である。
結果は、どうだったか?
ベスト10は
「笑える」43%
「テンションが上がる」38%
「かっこいい」32%
「かわいい」26%
「明るい」19%
「泣ける」「アツい」18%
「いっしょに楽しめる」17%
「ネタになる」「なごむ」16%
だった。
対して下位項目——求めている人が少なかった要素は?
「身近」4%
「知的」5%
「病んでいる」7%
「落ち着く」「集めたりレベル上げが楽しい」「壮大」8%
「おどろく/びっくりする」「マネしたくなる」9%
「謎めいている」「もやもやしたきもちをすくってくれる」「エロい」10%。
だった(なお、母数の男女比が4対6だったので5対5になるように割り戻して計算している)。
つまり、笑えるとかテンションがあがるといったポジティブな要素、「泣ける」「アツい」のような感情を揺さぶる要素をあげる人が全体では多かったことがわかる。
ちなみに、喜怒哀楽や恐怖といった感情を揺さぶる要素が上位に集中する傾向は、男女、学年、趣味嗜好さまざまなセグメントでどう切っても共通している。
どの感情を好むひとがより多いか、あるいは感情以外に関わる要素を好みに挙げているかどうかだけが、男女やジャンルによって分かれていた。
つまり、どんな趣味であれ、共通しているのは「感情を揺さぶるものを求めている(好んでいる)」ということである。
この点を満たさないかぎり、広く支持される≒売れることはない。
しかし、各ジャンル内で「評価」されるには、各セグメントごと(SFならSFファン)が特に好む要素を満たせばいいことになる。
これが前回言っていた
“伊藤計劃は「SFとしてすごいから売れた」わけではない。
ある作品が「売れるかどうか」に関わる要素と、「SFとしてすごい」と感じさせる要素はそれぞれ異なる。
両方やってのけたのが、伊藤計劃だったのである。”
が、意味するところである。