三浦しをん「イライラするけどエロくて楽しい『細雪』の現代版は」

直木賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』とそのシリーズ、辞書編集部を舞台にし、映画版も大ヒットした『舟を編む』など、さまざまなシチュエーションで人間関係を巧みに描く、作家の三浦しをんさん。最新作の長編『あの家に暮らす四人の女』は、なんとなくつながった4人の女性が、古い洋館で共同生活を送る物語です。しかも谷崎潤一郎さんの名作『細雪』をどこかで意識したこの作品は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

三浦しをんがいま輝いている3つの理由

20代で直木賞受賞!
2006年に29歳で『まほろ駅前多田便利軒』にて直木賞を受賞。2012年には『舟を編む』が本屋大賞に選ばれるなど強い支持を得ています

映像化作品、多数!
『風が強く吹いている』『まほろ駅前多田便利軒』『舟を編む』など映像化されている作品が多く、小説と映画で二度楽しめます。

キャラクターがスバラシイ!
人と人の関係性や距離感の巧みな描写に定評あり。ひと癖もふた癖もある登場人物がいとおしくなり、彼らのユーモアたっぷりの言動についついニヤニヤしてしまいます。

イライラするけどエロくて楽しい『細雪』

— 「谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品」と帯にありますが、『あの家に暮らす四人の女』は2016年の谷崎潤一郎生誕130年ありきで生まれた小説なんですか?

三浦しをん(以下、三浦) いえ、実は違うんです。『婦人公論』で連載のご依頼をいただいたとき、女の人たちの話がいいというご要望があって、「じゃあ、『細雪』みたいな感じがいいですかね」と盛りあがったんです。でも、その時点で“谷崎先生メモリアル”のお話は全然なくて。

— そうだったんですね。

三浦 それでできあがってみたら、わりと『細雪』っぽく……ないね(笑)。

— あはは。

三浦 ないんだけど、自分としては、今もしああいう物語を書くとしたらどうなるかなって考えながら書いていたこともあり、“谷崎先生メモリアル”に加えていただけることになったんです。『細雪』に寄せていかなきゃとは考えていなかったけど、頭の片隅には常に『細雪』があった。むしろそのくらいのスタンスでちょうどよかったと思っています。

— でも女性の物語という要望から、『細雪』を思いついたのは?

三浦 打ち合わせのときに編集さんから、「今、谷崎潤一郎全集の制作を進めている」という話があって、私もちょうどその頃『細雪』を読み返していたので、おもしろいかもしれないねって話になったんです。

— 読み返していたのは、何か思うところがあったんですか?

三浦 私はもともと、谷崎潤一郎の小説をそんなにたくさん読んでいないんです。『細雪』はずっと昔に読んでいたのですが、どこかぼんやりした話だなあと、そのときはあまりおもしろみが感じられなくて。だけど、谷潤先生は「語り方」にすごく技巧を凝らすひとだなという印象がありました。それで、『細雪』はどんな語り口だったっけ? と思って読み返してみたんです。

— 当時と印象は違いましたか?

三浦 そうですね。だって、改めて読んでも、なんかちょっと変じゃないですか(笑)。たとえば『春琴抄』とかも、語り方にとても工夫がある。『細雪』も、限りなく神の視点に近い三人称なんだけど、作者なのか誰なのかよくわからない人が出てきて、補足をしたりして、語りのレベルで視点のブレがあるっていうんですかね。でもそれが自覚的で不思議な作品だなあと思いました。

— 不思議、ですか?

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