「『人間失格』が好きな又吉さんだが、芥川賞には合格した」
ピース・又吉直樹の小説『火花』が芥川賞を受賞、古館伊知郎が『報道ステーション』で「芥川賞と本屋大賞の区分けが段々なくなってきた感じがする」と発言したことに非難が集中したようだが、どうして皆、『NEWS ZERO』の村尾信尚を放牧するのだろう。彼は、受賞の報を受けて「(太宰治の)『人間失格』が好きな又吉さんだが、芥川賞には合格した」と語り、隣り合うキャスター陣を見事に硬直させた。
文学が何のために存在するのか、という問いに一言で答えることは難儀だが、「こういうことを言う人にならないため」は、かなり正答に近いのではないか。どの場面でも「オレなりの分析」を提示する、いかにも古館らしい意見に賛同はしないが、賛否すら出ない沈黙を作り上げる村尾に、「今回の受賞で文学の魅力が広まってくれれば」と、その意義を教えられた気がする。
純文学は難しいのか
『火花』を読んだ和田アキ子が「みなさん『純文学を感じた』というが、何も感じなかった」という感想を吐露したことでむしろ『火花』の純文学性が確約されたが、「このジュース、果肉がめっちゃ入ってる!」と同様のアプローチで、小説の中から「純文学」を探し出そうとする姿勢は滑稽である。
純文学が、読み手の読解力を鼻で笑うかのように「分からないなら、もう読んでくれなくて結構」と突き放す態度を持ちやすいのは事実。又吉は芥川賞の会見で「僕の小説を1冊目として読んでもらえるのは嬉しい。最初の2、3冊は難しくて分からないこともあるかもしれないが、100冊読んだら、絶対、本好きになると思う」という旨を述べた。この会見だけではなく、あくまでも自分の小説をきっかけにして読むジャンルを広げてくれればいい、とあちこちで繰り返してきた。つまり、ストライクゾーンを広げて欲しい、と。
又吉の純文学好きと綾部の熟女好き
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