ネット書き込みの被害者になった場合、どのように対処すればいいのか?

日本でも、昨年、東京地裁で認められた「忘れられる権利」。日本で初めてグーグルから削除仮処分決定を勝ち取った神田弁護士が伝授する、ネット上の書き込みでトラブルにあったときの対処法。ネットの書き込みの被害者になってしまった場合や、過去に自分がしたこと、書き込んだことに対応していくのか、具体例を交えてわかりやすく説明します。また、今後の日本に必要になるであろう、法整備について提言します。

削除できるケースのごとの分類

公開されたくない情報や不利益を被るネット記事はどれくらい削除請求できるのかを、ケースごとにまとめてみたいと思います。

 私が、ネットでの検索結果について個人から受ける相談事例は大きく分けて、3つあります。

・名誉権侵害
「そんなひどい人だったのか」と思われてしまうような、根も葉もない悪口を書かれた場合が該当します。ただし、書いた人の主観に基づいた意見や感想の場合は、名誉権侵害にならないことがあります。

・侮辱
プライドが傷つけられた場合です。もっとも、プライドが傷つくかどうかは人によって異なりますので、誰であっても傷つくような程度のひどい表現の場合に限ります。

・プライバシーの侵害
 その人の立場になったとき、誰もが嫌だと思うような個人情報を書かれた場合が当てはまります。〝誰もが嫌だと思うかどうか〟がプライバシー侵害のポイントです。よく、自分の名前が表示されること自体、嫌なので削除したいという相談がありますが、名前の表示は、誰もが嫌だと思うような個人情報の公開ではないため、プライバシー侵害では削除請求ができません。

相談割合としては名誉毀損+侮辱が8割、プライバシー侵害が2割といった印象です。

「不倫」「セクハラ」「パワハラ」をしているとの書き込みをされたら? 

 では、具体的な相談事例を例にあげ、削除請求ができるかどうか見てみましょう。

 人事担当者が社員に関する情報をネット検索しているといわれるいま、ネットの記事や情報が人事評価に影響を与えかねないだけに、知らぬが仏では済まされません。また、そういった書き込みが、転職活動に影響を与えることもあります。

以下のような場合にはどうなるでしょうか。

例1:「斉藤部長は、部下の女性と不倫をしている。」とネット掲示板に書かれた場合

この場合、実際に不倫をしているか、していないかによって侵害される権利は異なります。

→不倫をしていない場合:名誉権侵害
→不倫をしていた場合(誰しもが公開を望まない個人情報ということで):プライバシー侵害

どちらのケースでも原則として削除請求ができますが、「斉藤部長」がどこの誰であるかを特定できることが前提です。同姓同名の人に関する話である可能性があれば、たとえフルネームが書かれていたとしても、特定の人の権利を侵害しているとは判断されません。

例2:「斉藤部長はセクハラおやじ」とネットの掲示板と書かれた場合

→セクハラをしていない場合:名誉権侵害
→セクハラと言われても仕方のないような行為を行っていた場合:法的な削除請求はできない

不倫と違って、セクハラをしている事実の指摘は、プライバシー侵害にならないと考えられます。 また、親しみを込めて接したつもりが、セクハラだと受け取られることもありますので、「セクハラなどしていない」という主張で削除請求をする場合には、事例ごとに慎重に検証しなければなりません。

例3:「斉藤部長はパワハラ上司」とネットの掲示板と書かれた場合

「パワハラ」は「セクハラ」と違って、あまり言葉の外縁が明確ではありません。単に「パワハラ上司」と書かれただけで、具体的にどんなことを部下にしたのかが書かれていない場合には、「そんなひどい人だったのか」と思うかどうかが判断できません。そのため、「パワハラ上司」だけでは、実は削除請求はしにくいのです。

・事実無根の情報を書き込まれたら→ 名誉権侵害

「取引先からバックマージンをもらっている」「会社のお金を私的に使っている」「反社会的活動と関わりがある」などと事実無根のことを書かれ、困っている、という場合はどうでしょうか。 事実無根であれば、名誉権侵害として削除請求ができます。

 また、女性を対象とした誹謗中傷として、あたかも不特定多数の男性と性交渉をしているかのような表現を用いた書き込みが挙げられます。このケースは、「そのような事実はない」という主張で名誉権侵害を主張することもできますし、使用されている言葉によっては、ひどい侮辱だ、という主張をすることもあります。いずれにせよ、削除請求ができます。

・検索予測キーワードによる名誉毀損は削除できるのか→名誉毀損と認められていない

 たとえ、書き込みが事実無根だとしても、いくつものサイトにコピーされ、拡散していた場合はどうでしょう。

 いくつかの記事を見た人が、ほかにも似たような記事があるのではないかと思って「A社 斉藤部長 セクハラ」という単語の組み合わせで何度も検索すると、「A社 斉藤部長」と入力しただけで、自動的に「セクハラ」というワードも検索候補として表示されるようになる、という問題があります。これが検索候補による名誉毀損の問題です。

 東京高等裁判所では、検索候補が名誉毀損になるとは認められていません。単に、キーワードが並んでいるだけだから、という理由です。

過去の自分の失敗を消すことはできるのか
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ネット検索が怖い

神田知宏

バカッター、リベンジポルノ、など、ネットの進化によって、人生を狂わされる人が増えています。一度ネットに書き込まれた自分の過去は消すことができない のか? 日本で初めてグーグルから削除仮処分決定を勝ち取った気鋭の弁護士・神田知宏氏が...もっと読む

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コメント

1WnlqVSJd1d8Qc0 ま、あまりネットを信用しないことだよ。 3年以上前 replyretweetfavorite

hoomsroom これは知っておきたい情報。 4年以上前 replyretweetfavorite

ino_net ケース毎に適用される法律がまとめられてて勉強になる。意外だったのは子どもが悪口書いちゃった場合。被害者から請求してもらわないと削除請求できないのか…。 4年以上前 replyretweetfavorite