史上最凶のヤンデレだ!—『霊応ゲーム』

「イギリスの寄宿学校における気弱な美少年とイケメン一匹狼の危険な友情」という設定が読者の魂に火をつけて、「幻の傑作」と崇められてきた小説『霊応ゲーム』。「ハヤカワ文庫補完計画」によって5月に復刊された本書のあとがきを公開します。



 出会ってはいけない二人だった。
 寄り添ってはいけない魂だった。


 ■蘇る名作

 本書は二〇〇〇年に邦訳・出版された『霊応ゲーム』の文庫化である。

 出版時、手にとった人からは名作・傑作と高く評価されたものの、決して大ヒット作ではなかった。年末のランキングで上位に入るようなこともなかった。そしていつしか、店頭から姿を消した。

 けれど確実に、強く、読者の心を捉えたのである。時間をかけながらじわじわと広がった「何これ、すごい」という声。評判が評判を呼び、ネットには入手できないことを嘆く書き込みが増えた。古書価格が高騰し、復刊や文庫化を望む声が上がり、広がり、高まり、熱を帯びた。

 単行本出版から十五年。お待たせしました。ようやく文庫でお届けできます。

 まずは本作のファンのひとりとして、「復刊して!」と叫んでくれた多くの読者にお礼を申し上げたい。この名作が蘇ったのは、あなたのおかげです。


■ 英国パブリック・スクールの深遠なる世界

 さて、では本書の何がそれほどまでに読者の心を掴んだのか。まずはアウトラインを説明しておこう。

 物語は一九九九年、スクープを狙うジャーナリストが、四十五年前にとあるパブリック・スクールで起きた事件について関係者に話を聞く場面で始まる。この関係者が誰なのか、どんな事件だったのかはこの段階では明かされない。

 そこから話は一九五四年に遡る。イギリスのノーフォーク州にある全寮制の男子校、カークストン・アベイ校が舞台だ。誠実だが少し気弱な十四歳の少年ジョナサンは、ラテン語の教科書を忘れてしまい、同級生のリチャードに見せてもらうことに。ルックスが良く勉強もできて、なのに一匹狼で孤高を保っているリチャードを、ジョナサンはずっと羨望の眼差しで見つめていた。

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霊応ゲーム (ハヤカワ文庫NV)

パトリック レドモンド
早川書房
2015-05-15

SFマガジン

この連載について

パトリック・レドモンド『霊応ゲーム』解説

大矢博子

「50年代イギリスの寄宿学校における、気弱な美少年とイケメン一匹狼の危険な友情」という設定が読者の魂に火をつけて、「幻の傑作」と崇められてきた小説『霊応ゲーム』。「ハヤカワ文庫補完計画」によって5月に復刊された本書の解説をcakes版...もっと読む

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コメント

sai0520 (気になるからメモっておこう) 5年以上前 replyretweetfavorite

Hayakawashobo 出会ってはいけない二人だった。 寄り添ってはいけない魂だった。 SFMcakes版、本日はあの「幻の傑作」のあとがきを公開しています。 5年以上前 replyretweetfavorite