休日の中央線快速は荻窪を発った。吉祥寺に停まったら、そこからは各駅になる。
「電車でフリスクは『 あり 』だね?」
新渡戸先輩が言った。勝手に頭の中で組み立てた話題をいきなりパスしてくるのはやめてほしい。
「だから、先輩が持ってるのはミンティアです 」
とりあえず訂正してから、僕は仕切りなおした。
「それで、何が『 あり 』なんですか」
「電車内での飲食の話だよ。フリ......ミンティアは『 あり 』だよね?」
ああ、車内で食べても許されるものかどうかってことか。
 「僕もありだと思いますよ」
「メントスも」
「ありでしょう」
「ポテトチップは」
「それは無しです」
たぶん、油ものはダメだ。それを聞いて先輩は、そうなのか、という顔をした。
「じゃあ、おにぎりは?」
僕は返答に詰まった。
「おにぎりは......難しいですね」
「難しいって? 具によって違うとかそういうことかな。鮭なら無しだけど、高菜ならありとか」
「そうじゃなくて。人によってあり派と無し派で分かれるから」
「都築くんはどっち?」
「僕は電車内では食べないですけど、食べてる人を見かけても別に何も思いません。満員電車ならちょっとダメだと思いますけど」
「パンも?」
「パンも同じです」
「チーズフォンデュ」
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