そもそも人は、どんなときに「おもしろい!」と思うのだろうか?
先ほど僕は、人は「謎」を突きつけられたとき、好奇心を掻きたてられると述べた。
それにならっていうなら、人がなにかを「おもしろい!」と思うとき、そこに存在しているのは意表を突く仕掛けである。
驚きのない物語、予定調和のまま展開していく物語など、なにひとつおもしろくない。意外な展開、衝撃的なセリフ、予想もしなかった結末があってこそ、読者は感情の振り子を揺さぶられ、おもしろいと感じる。
おもしろさの原点にあるのは、意表を突かれた衝撃なのだ。
たとえば、僕の『エンゼルバンク』という作品は、転職や起業に関する情報がたっぷり詰め込まれたマンガだ。連載にあたっては、業界トップの転職エージェントをはじめ、数多くのベンチャー経営者に取材を重ねてきた。中途半端なビジネス書よりもずっと具体的で役立つ情報が盛り込まれている。
しかし、どんなに有益な情報であれ、それを羅列するだけでは読者は振り向いてくれない。しっかりとした物語に乗せて、1話ごとに意表を突く仕掛けを用意してこそ、読者はおもしろいと思ってくれるのだ。
『エンゼルバンク』より(©三田紀房/講談社)
マンガやプレゼンのおもしろさは、ひとえに「意表の演出」にかかっているといっても過言ではない。
とんでもない極論・暴論をぶちかますのもいい。あるいは平凡な意見や提案であっても、文脈を変えることでいくらでも意表を突くことはできる。
実際、ビジネスシーンにおけるプレゼンでは、そうそう簡単に極論・暴論をかますことはできないだろう。ポイントは「現実的なプランを、いかにして意表を突いた文脈に載せて語るか」である。まずはそのあたりから説明していこう。
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