■注目の新作
ゼンデギ زندگی とは、ペルシャ語で生命、生活、生存を意味する言葉だ。舞台は2012年の近過去(原著が出た2010年当時は、直近の未来だった)と、近未来2027年のイラン。テーマはイーガンがこれまで何度も取り上げてきた、「完全に電子化された人間の意識」が存在する意義である。本書では、それがよりリアルな現実社会のうえで提示されているのだ。
オーストラリア人ジャーナリストであるマーティンは、保守政権下のイランで取材活動をしていたが、強権に対する民衆の反発と新政権の誕生を目撃する。彼らは携帯電話を使ったピアツーピアのネットワークで、通信遮断を克服した。一方、母娘で米国に亡命し、MITで脳の電子的マッピングを目指すヒト・コネクトーム・プロジェクトに従事していた娘ナシムは、人間の完全なコピーについて奇妙な提案を受ける。15年後、イランの世界的なVRゲーム〈ゼンデギ〉では、サッカー選手の脳スキャンをゲーム内人格に取り込み、迫真性を高めようとしていた。
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