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HN・匿名でもかまいません。
他人の短冊を読むのが好きです。
現在私は東京に出張でやってきているのですが、ちょうど七夕の時期ということで、あちらこちらで短冊を見かけます。その日訪れたオフィスにも、笹があり、そこに短冊が飾られてありました。
そこは都会によくあるような、数十階建てのビルに何十社もの会社が入っている建物です。オフィスビルっていうのかしらね、かっこよく言えば。オフィスビルでのイノベーティブなミーティングを終えた後、エレベーターでロビーホールに下りていったら、さりげなく七夕飾りがあったので、私はなんだかほっとしました。見上げるほどの笹には色とりどりの短冊が、金色の折り紙の星々とともに飾られていました。
「あ、スイマセンね。新しい短冊、なくなっちゃったんですよ」
ロビーを見張っていた警備員さんが、手を後ろに組んだままでそう言いました。
「昨日まであったんですけど……スイマセンね」
「あ、いいんです。私はこのビルで働いているわけではないので」
そう言うと私は、たくさんの短冊のほうへ視線を戻しました。
「スイマセンね。でも、見てるだけでも面白いですよ。ほら、ここに傑作があるから」