あのころふたりは幼くて
男と女 なんて知らずに
野山をめぐった 私たち
十四歳
私はあなたの妻になり
恥ずかしさに はにかんで
あなたを見れず 壁を向いたきり
1000回呼ばれて ようやく一度ふりかえる
そんな私の毎日でした
十五歳
私の顔にほほえみ生まれ
この先 なにが起ころうと
いつかふたりが 灰になっても
混ざり混ざって 側にいたいと
願っていた私でした
十六歳
あなたは遠くへ旅立ちました
水の流れの危険な場所へ
家の前に残されたのは
旅立ちかねて 行きつ戻りつした
いくつかの あなたの足跡
そして私は
どれだけの歳月を待ったのでしょうか
あなたの残した足跡の ひとつひとつ
緑の苔が ふかくふかく覆い尽くして
野猿の鳴き声だけが 空に響くのです
もうこれ以上 私は年をとりたくない
あなたのいない 鏡の中で
「十六歳、君は遠く」
李白(701~762)