あとのことは知らんよ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

働かずとも生きていける建物「アルカディアマンション」を舞台にした終末SF『我もまたアルカディアにあり』を刊行した作家の江波光則氏。もともと映画が好きだという江波氏に、「終末」つながりで「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の感想をまとめていただきました。

■説明しないこと

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見たのですが。2回。

漫画の描き方みたいな本、漫画も描かないのに読むの結構好きなんですけど、よく「背景を描き込みすぎるな(キャラが埋没するから)」的なアドバイス書いてあるんですけど、言いたい事は分かるんですけど僕ァ無駄に背景をゴリゴリ描き込んである絵が好きです。

 マッドマックスってシリーズ通して全部、そのスタイルでやってる映画で、一コマしか出て来ない何かが無駄に意味を持っているという、そういう作品だと思ってます。で、キャラを埋没させない為に、過剰に暴力的になり勢いが増していくという、ラーメン二郎かよって感じの映画作り。

 普通の人なら、そこまで考えてるなら客に伝わるようにしたほうがいいんじゃない? ってなるんですが、いちいち説明してると尺取られるしもういいよ、っていう雑な感じ。最初の「マッドマックス」だと署長の部屋着、それなんだよとか。「マッドマックス2」だとヒューマンガスのマグナム入ってるケースの内側に貼ってある謎の写真とか。「マッドマックス サンダードーム」だとサックス吹いてる奴の丁髷とかアイアンバーの謎のお面とか。

 言いだしたらキリがないんですが、そういうのとにかく大量にまぶされていて、全部説明はしない、という無茶なスタイルの作品造りが今回も健在で、あんまりにも説明しないからフュリオサの左手がないのに気づいたのは砂嵐抜けてからだったという有様です。 普通の映画だったら初登場の時に「義手を装着する」みたいなシーン入れて強調すると思う。でもこの映画はしない。だからボケッと見てると一体何なのってシーンしかないし、考える暇も与えて貰えずドカドカ爆発したり殴り合ったり爆走したり目まぐるしい。完全に見るドラッグ。神は細部に宿る。

 そういえば今回初めて知ったのは、パンフレットにあったインタビューで「2でウェズの後ろに乗ってたのは愛人じゃなくて養子」っていう事実なのですが、そんな大切な事すら説明してない。あんなのホモセクシャルっぽく見えるに決まってるのに、ずーっと説明して来なかったというストロングスタイル。最高ですね。

江波氏私物

■バイクとか車とか

 僕なんかバイクとか車とか好きなのでそればっか見ちゃうんですが、元が何か分かんないぐらいイジられているのでメーカーとのタイアップもあり得ない有様。フォードだって今更ファルコンをクローズアップされてもって困りますよね。日本で言ったらハコスカみたいなもんですし。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

SFマガジン

この連載について

江波光則映画レビュー

江波光則

6月下旬に終末SF『我もまたアルカディアにあり』を刊行した江波光則氏。 もともと映画がお好きな江波氏に、「終末」つながりで「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見た感想をまとめていただきました。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

283vawa これもしっくりきた。 約4年前 replyretweetfavorite

PONKOTSUforever こっちは頭いい人が観た場合 2回でよくここまで考察できるな 僕の貧弱な頭では理解するのに3回は必要 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』| 4年以上前 replyretweetfavorite

bolero_MURAKAMI 現時点で最高のマッドマックス批評 https://t.co/tU2aZukkKR 4年以上前 replyretweetfavorite

isoparametric7 【お知らせ】江波光則さんの映画レビュー、「 4年以上前 replyretweetfavorite