アートディレクション—“ポップン王子”がデザインのアワードをとるようになるまで

未来をつくる“天才”を育てるための学校、BAPA第1期につづいて、第2期も、今をときめくクリエイターが講師として登場します。最初の授業はカイブツのアートディレクター・木谷友亮さんによる講義です。好きなものは「グリズリースーツ」に「九龍城」? 手がけた仕事などを通して、「鬼気迫るものが好き」という木谷さんの、独自の価値観に迫ります。


木谷友亮(きたに・ゆうすけ/株式会社カイブツ代表・アートディレクター)
1976年、千葉県生まれ。日本デザイン専門学校卒業後、グラフィック広告の制作プロダクションに入社。電通インタラクティブ・コミュニケーション局への出向を経て、2005年独立。2006年、株式会社カイブツを設立。カンヌ広告最銀賞、One Show インタラクティブ金賞、Clio金賞、NY ADC銀賞など、数々のアワードを受賞している。

木谷友亮 僕は小学校、中学校は特に変わったことなく育ち、高校で工業高校に入りました。中学の頃から大工仕事が好きで、そういった手作業が学べそうな工業高校に入ったんです。入ったらすぐに鉄のブロックをひとつ与えられて、面をひたすらヤスリで平らにするという作業をやり続けました。手で感触をつかめということで、軍手は禁止。指紋がなくなりそうでした。

高校の推薦で大学には一応入ったんですけど、清掃のバイトばかりしていました。就職活動の時期になって、このまま惰性で就職しても将来大変なことになる、となにか手に職をつけようと。そこでデザインの専門学校に行きました。

僕としては、一念発起して選んだ進路。なのに、まわりはまじめに授業受ける気がなくて、タバコ吸ってる学生ばかりで。僕はもう22歳だけど、クラスメイトは18歳。あだ名は「おじさん」でした(笑)。

好きなものは、グリズリースーツ、九龍城……

ここで、僕の方向性についてわかってもらうために、好きなものについて少し話します。

例えば、僕が好きなのは「グリズリースーツ」。


Troy Hurtubise: Project Grizzly

グリズリースーツというのは、Troy Hurtubiseというカナダ人のおじさんが開発した「対グリズリー装甲服」です。こんなくだらないものに巨額の金と人生をかけてつくっています。映像では、グリズリースーツを着て崖から落ちてみて、これは骨折したようです(笑)。最終形では、バットでボコボコに殴られても大丈夫なようになっています。

もう一つ好きなのは、「九龍城」です。


Kowloon Walled City (1988)

これはビルを増築し続けて迷路みたいになった香港の貧民窟です。1994年に撤去されてしまったんですけどね。これはもう本気で絵的にかっこいい。このなかに、約5万人が実際に住んでいたんです。住んでいる人の様子を撮影した『City of Darkness』という写真集がすごくいいんですよ。

九龍城を写真でみて、めちゃくちゃ好きでした。だけど気付いた時にはもうなくて、それならばと、香港に行った時にひたすら街の写真を2000枚くらい撮り続けて、1年かけて建物をきれいに切り抜いて、それを組み合わせて自分で九龍城をつくったんです。データが大きすぎて、これをつくっているときに一度マックが壊れました。

こうした例からも傾向が見えてくるかと思うのですが、僕がなにかをつくるときに大事にしているのは

「鬼気迫るものなのか」

ということです。

あくまでこれは僕の考えですが、時間をかけてつくられたすばらしいものが一番よくて、時間をかけてつくられた駄作が一番わるい。広告業界では、時間をかけずにいいものができれば、それが一番だと思われていますよね。でも、やっぱり鬼気迫るものは時間をかけた先にできると、僕は思っています。

今日、話の全体を通して言いたいことはこれです。

「自分の価値観を持とう」

価値観があると何がいいかというと、

・表現したいものがはっきりする。
・ひとに見せていいわるいがわかる。
・自分が何者なのかわかりやすい。

これは自分自身にも言えるのですが、何かをつくるときについつい事例を見てしまいますよね。そして、世の中でこういうものが流行っているから、こんな感じがいいかなと、事例を元に企画したりデザインしたりする。でも、それが本当に自信を持っていいと言えるものなのか。それを考えるのが大事だと思っています。そのためにも、好き嫌いをはっきりもっておくことは必要です。

あと、仕事をする上で大事にしていることがあります。

「これは人に見せていいのかよくないのか」

これを立ち止まって考えること。

例えば、作品でも資料でも、「これ、あと1分がんばればもうちょっとよくなるのに」と思うことがよくあるんです。出す前に、自分の価値観に照らし合わせて、「これは人に見せてもいい」というレベルまで、もっていけるか。このハードルを自分で設けて、気をつけるようにしています。

鬼気迫らんとする事例
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BAPA2—次世代型スーパークリエイターの学校 第2期

BAPA

デザインや広告のクリエイティブで、世界的なアワードをとり続ける2社、バスキュールとPARTYが主催する学校“BAPA”の第2期が始まりました! 第2期も、第1期同様に、ケイクス上で授業の内容をぎゅっと濃縮して紹介していきます。まずは、...もっと読む

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コメント

yaiask カイブツ社の木谷友亮さんの貴重な授業です! 約5年前 replyretweetfavorite

2gta9 “僕がなにかをつくるときに大事にしているのは 「鬼気迫るものなのか」 ということです。” 約5年前 replyretweetfavorite

bapa_ac 【cakes連載】 「鬼気迫るものなのか」 カイブツのアートディレクター・木谷友亮さん https://t.co/nyxMlzsjMK http://t.co/wDs40bziUz 約5年前 replyretweetfavorite

hirarisa_R 「進撃の巨人展」の話が! 約5年前 replyretweetfavorite