2020年」のアイドルライブをクリエイトせよ!—入学式

デザインとプログラミング。両方のスキルを兼ね備える、次世代型スーパークリエイターの育成を目指す学校ができました。“Both Art and Programming Academy”、その名もBAPA(バパ)の第2期が始まりました! デザインや広告のクリエイティブで、世界的なアワードをとり続ける2社、バスキュールPARTYが主催する学校“BAPA”の第2期が始まりました! 第1期同様に、ケイクス上で授業の内容をぎゅっと濃縮して紹介していきます。まずは、3月に代官山でおこなわれた入学式の様子からお伝えします。

校長のあいさつ

デザインとプログラミングの両方を理解する、未来を「つくる」天才を育てるためのまったく新しい学校“BAPA”。2014年7月におこなわれた第1期生の卒業制作展は、2日間で1500人を集めるという大盛況ぶりでした。そんな、いま注目の学校の第2期が、いよいよ始まります。

今回は、前回よりも応募者数が1.5倍に。4倍を超える倍率を突破して入ってきた精鋭たちは、広告代理店社員、デザイナー、美大生にタレントと、第1期に勝るとも劣らない個性的なメンバーです。気体に胸をふくらませた生徒たちが着席し、校長のあいさつが始まりました。BAPAの校長はPARTYの代表・伊藤直樹さんとバスキュールの代表・朴正義さんです。

伊藤直樹(いとう・なおき/PARTY代表)
1971年、静岡県生まれ。W+K Tokyo(ワイデンアンドケネディ トウキョウ)代表などの経験を経て、2011年にPARTYを設立。「経験の記憶」をよりどころにした、身体性や体験を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。国内外の200以上に及ぶデザイン賞、広告賞を受賞。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。

伊藤直樹 BAPAは、講義を聞いて宿題をするだけの学校ではありません。バスキュールさんやPARTYが普段やっている仕事のやり方を、みなさんが体験できる場所になっています。それをやるなかで、僕からひとつお願いしたいのは、今までのやり方を1回捨てるということ。

 BAPAに来るときは、「ちょっと違う国に来た」くらいの心構えが必要です。ここでは、一生懸命取り組んだ課題に対して、アイデアがつまんないとか、デザインがひどいとか、いろいろ言われます(笑)。講師にも言われるし、チーム内で意見がぶつかることもある。そんなときにいちいち怒ったり、へこたれたりしないで、「ここはそういう場なんだ」と受け入れてほしい。ここでの作品づくりは、葛藤や苦境だらけかもしれない。でもそれを乗り越えたら、絶対にいい作品ができあがります。ここにしかない体験だと思って楽しんでください。


朴正義(ぼく・まさよし/バスキュール代表)
1967年、東京生まれ。言語や世代を超え、多くの人に楽しんでもらえるインタラクティブコンテンツを生み出すことを目標に、2000年にバスキュールを設立。エンターテイメント性の高いウェブサイト制作やインタラクティブコンテンツで、カンヌ国際広告賞、ニューヨークADC賞、東京インタラクティブ・アド・アワード ベストクリエイター賞など受賞歴多数。

朴正義 みなさん、入学おめでとうございます。最初にこのBAPAをなぜ始めたかという話をします。

 バスキュールという会社を2000年につくったときは、「一方向のマスなクリエイティブなんてもう古い。これからはインタラクティブだ」と考え、時代を先取りするような作品をそれなりにつくってきたつもりでした。クリエイティブ業界って、じつは徒弟制だったり縦割り意識が強かったりします。スマホが普及してきた5年くらい前から、「やばい、もうおれらは通用しないのかもしれない」と感じてきたんです。

 いまやスマートフォンが普及して、一般の個人が受信も発信もできるようになってしまった。もう、一部のクリエイターがつくったものをどう届けるか、というレベルの話ではなくなってきたんです。デザイン、テクノロジー、プランニング、ハードウェア、ソフトウェア……そういったジャンルを横にまたいでいかないと、新たな価値は生まれない。

 では、そんな時代に新しいクリエイティブを生み出せる人材が、どれくらいいるのか。越境できる人材がぜんぜん育っていない。そういうおもしろい人材がいても僕らの業界に来てくれないんじゃないか、という危機感からこのBAPAという学校をつくりました。

 BAPAの卒業制作はチームでつくります。ジャンルの枠を超えていかないと新しいものはつくれませんが、それをひとりの人間が全部やるのは無理です。つまり、必然的にチームで対応しないといけなくなる。こんな未来になったらいいなという想像力をもって、それぞれの業界の垣根を超えて入り込んでいくような人材がここから生まれたらうれしいです。

カリキュラム紹介

BAPAの授業は、講義とワークショップの2部制です。

ウェブデザイナー・インターフェースデザイナーの中村勇吾さんや映像作家の辻川幸一郎さんなど、各回豪華なゲスト講師陣が講義をおこないます。そして、その講師が出す課題に沿ったワークショップに取り組みます。それと並行し、卒業制作をチームでつくっていきます。

基調講演

ここで、BAPAを第1期からシティパートナーとして支えている東急電鉄の磯部陽介さんがご登壇。「渋谷の街のエンターテインメント」と題して、基調講演がありました。どうやら、卒業制作にも関係があるようです。

じつは渋谷はライブハウスが日本一集積していて、映画館の数も一番多い街。先進的な情報発信をしていたり、新たなビジネスの創出拠点があったり、世界を牽引するようなファッションがあったり、舞台公演などのエンターテイメントも多く、ここでしか体験できないイベントの数々があったりと、そういったものがカオスのように集まっている街だそうです。

制作発表の舞台は、渋谷ヒカリエホール。Perfumeが氷結のPRとしてホログラフィックを使ったライブをおこなったり、世界的なカンファレンスTEDの東京版、TEDxTokyoが開催されたのもこの場所でした。

そんな渋谷を舞台に、第2期のメンバーが取り組む卒業制作のテーマが発表されました。


“2020年の渋谷系”
ライブ・エンターテインメントをアップデート


これは一体どういうことなのでしょうか? 校長の朴さんが解説します。

 ライブの街である渋谷で新しいライブ・エンターテインメントをつくりだす、というのが今回のお題です。ヒカリエホールという場所を舞台に、みなさんのアイデアとテクノロジーとデザインの力で、みんながあっと驚くようなライブを実現してほしいと思っています。

 今回のBAPAは日本テレビの「SENSORS」という番組にも協力してもらっていて、その力を借りてアイドルグループのライブパフォーマンスをBAPAの卒業制作で実現します。まだ、どのグループかは決まっていないのですが、アイドルのライブを演出するということで考えておいてください。
「虹のコンキスタドール」に決定。「虹のコンキスタドール」は、pixivの「つくドル!プロジェクト」から第1期のオーディションを経て結成したユニット。「毎日が文化祭!」をテーマに、各メンバーはアイドルとしてだけでなくクリエイターとしても活動中

 企画を考えるにあたって、ひとつ条件があります。それはデザインとプログラムを理解する人材を育てるBAPAとして当然のことなのですが、インタラクティブなものであることです。簡単に言えば、入力と出力があるのがインタラクティブです。

 では、ライブ会場で発生する入力と出力とはどういうものが考えられるでしょう。そこをどこまで拡大解釈できるか、そして尖った事を考えられるかが鍵になってくると思います。テクノロジーを使ったライブパフォーマンスといえば、Perfumeのライブが思い浮かぶ人も多いでしょう。今回の講師には、Perfumeのライブを手がけているライゾマティクスの石橋素さんや、電通の菅野薫さんもいらっしゃるので、その講義からもヒントを得て、彼らにもできないことにぜひチャレンジしてほしいと思います。

 また、今回は「2020年」というのもひとつのキーです。ヒントになるのは、今から5年前はどうだったんだろうということです。5年前と今の大きな違いは、世の中の人が24時間、スマホという出入力端末を携帯していること。きっと2020年は、あらゆるものにコンピュータが埋め込まれて、出入力装置になっているかもしれません。今さかんに言われているIoT(Internet of Things)というやつですね。テクノロジーの世界では、「そんなの無理だ」「ぜったい流行らない」と言われたものが主流になることがよくあります。そのあたりも、考えてみてください。

ワークショップ

この流れをくんで、ワークショップでは「2020年のオリンピック観戦を、テクノロジーを使ってイノベーティブにする」というお題が与えられました。制限時間内にチームごとに一つの企画を決め、模造紙に書いてプレゼンテーションします。途中からは、バスキュールやPARTYのディレクターたちも話し合いに参加し、アイデアを広げたりまとめたりするヒントを出しました。


ここからは、講師からの評価が高かった2チームのアイデアを紹介します。

Aチーム ALL HOME GAME

「オリンピックで日本に来た世界各国の選手に、日本を好きになってもらいたい。そこでアウェイの日本を、ホームのように感じられる演出を考えました。スタジアムにホログラムで、各選手の実家のお茶の間を中継する。選手にとっては家族が近くで応援してくれているような気分が味わえます」

Eチーム SABOLYMPIC〜全国まどぎわ部長対抗

「日本が開催国ということは、時差がないので大抵の競技は昼に行われています。当然、日本人である私達は仕事があって見られません。でも、会社の中にはどうしてもオリンピックが見たくて、スマホやテレビで感染しているおじさんがいる。彼らをどうにかセンサリングして、心拍数が上がったり、「おーっ!」と声を上げた瞬間を検知。その決定的なシーンを、社員のスマホやパソコンに映し出す」

伊藤 講評に入る前に、アイデアを考えるとき、みんなが腹落ちするというのは大事なポイントだという話をします。

 先週、カリフォルニアのサンタバーバラという都市で、One Showという広告賞の審査をしてきました。そこには、世界中の国から広告に関わる人が集まっていました。審査員の人気を集めたのは、プロクター・アンド・ギャンブルの生理用品ブランドAlwaysが展開した、LIKE A GIRLキャンペーン。

 これは、大人の女性や男性、男の子、そして小学生くらいの女の子に「女の子のように走ってみて」「女の子のようにボールを投げてみて」と言った時の振る舞いを撮影した映像です。大人の女性と男性と男の子は、なよなよとしたガーリーな動きをします。でも、本物の小学生くらいの女の子は、全力で走るし、力強くボールを投げるんです。社会的に押し付けられている“女の子像”というものが厳然と存在し、女性はそれを押し付けられて育つということが、この比較からわかります。これは、どの国の人にとっても共感できるキャンペーンなんです。こういう風に、テクノロジーがおもしろいとか発想がユニークというだけでなく、「そうそう、そうだよね」と皆が腹落ちするというのは大事なポイントです。

 「ALL HOME GAME」は、そういう意味で名は体を表すところがあり、僕は聞いてすぐ「いい!」と思いました。日本が世界中の選手のホームになったら、すてきじゃないですか。「SABOLYMPIC」は「サボってでもオリンピックを見たい人をフィーチャーする」というポイントをネーミングとしてとらえて、どんと出せたのが良かったですね。

 卒業制作の企画を立てるときも、きっとSNSのタイムラインのようにいろんな意見がバーっと出て、流れていってしまうことがあるでしょう。そこで、本当に残すべきアイデアはしっかりつかまえておくような議論の仕方を、身につけていってください。こういう企画出しは、おもしろい視点を見つける大会みたいなものでもあります。それを、個人ではなくチームとしてやっていく方法を、今後みなさんで見つけていってほしいと思います。

入学式のプログラムはこれで終了。最後は、みんなで集合写真を撮りました。ここから4ヶ月、このメンバーのなかからどんなクリエイティブが生まれてくるのでしょう。

次回は『進撃の巨人展』のアートディレクションや、ロボット「クラタス」のプロデュースなどを手がけるカイブツ社のアートディレクター・木谷友亮さんが講師として登場します。さて、どんな授業が展開するのでしょうか。


構成:崎谷実穂 写真:はやかわみお

次回「アートディレクション—木谷友亮(カイブツ)」につづく

つづきを待ちきれない人は、BAPA第1期の講義もあわせてお楽しみください。ユーザーエクスペリエンスからテクニカルディレクション、アートディレクション、フィジカルコンピューティングまで豪華講師陣による盛りだくさんの内容です。
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この連載について

BAPA2—次世代型スーパークリエイターの学校 第2期

BAPA

デザインや広告のクリエイティブで、世界的なアワードをとり続ける2社、バスキュールとPARTYが主催する学校“BAPA”の第2期が始まりました! 第2期も、第1期同様に、ケイクス上で授業の内容をぎゅっと濃縮して紹介していきます。まずは、...もっと読む

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maruru_h 「デザインとプログラミング。両方のスキルを兼ね備える、次世代型スーパークリエイター」 テクニカルアーティストを育ててくれるのかと思ったけどちょっと違った > 「 2020年」のアイドルライブをクリエイトせよ!——入学式 https://t.co/bCqnp2XYo7 4年以上前 replyretweetfavorite

pixiv 次世代型スーパークリエイターの育成を目指す学校 BAPA(バパ)の第2期卒業制作展にpixivの「つくドル!プロジェクト」で結成された「虹のコンキスタドール」が出演! 4年以上前 replyretweetfavorite

pommeblanc 今年も始まった! 4年以上前 replyretweetfavorite

gakimori1126 BAPAの連載、始まりましたよー。 ----------------------------------- 4年以上前 replyretweetfavorite