「ときめきメモリアルGirl’s Side」という女子向け恋愛シミュレーションゲームがある。主人公(私)が高校に入学し、3年間かけてあらゆる自分磨きをしつつ、最終的に狙っている男の子から卒業式に告白されるよう仕向ける、ざっくりいうとそんな趣旨のゲームである。
もう少し補足すると、自分磨きのためには「ストレス」「学力」「運動」「流行」「リッチ度」「芸術」「気配り」「魅力」と、非常に細やかにカテゴライズされたパラメータが指標となる。ゲーム中はこれが絶えず画面片隅に表示されていて、自分の状態が常に見えている。「運動」ばかりやっていると「学力」は下がるし、服をたくさん買えば「流行」が上がるのと引き換えに「リッチ度」がダダ下がる。これは現実の世界で、意中の男子にアピールする上でも有効なのであって、スポ根男子を狙っているのに勉強ばかり頑張っても無意味だし、アーティスト気質の男子を落とすには芸術に秀でている必要があるというわけだ。このパラメータとは別に、狙っている彼とのラブ度を示すゲージもあって、定期的に発生する会話やイベント時の振舞いによって値は上下する。つまりは、ニーズに応じた自分磨きと、実際に接触した際の好印象を蓄積させて意中の男子を落とすのだ。
念のために言っておくと、こういったバーチャルな青春に一喜一憂していた私のリアルな青春がさぞ暗澹たるものだったろうという心配はご無用である。なぜなら私は、出産直後の、絶賛子育て真っ只中という時期にこのゲームに精をだしていたからである。……それもそれでどうかという声はさておき、乳幼児と付き合っていると、スケジュール通りとはいかない隙間時間があちこちに発生するので、昼間でも夜中でも都合をつけて付き合ってくれるゲームは当時の私のベストフレンドだったのだ。
そうはいっても、やっぱりいつしか飽きる。全くプレイしなくなってから、気がつけば早10年。すっかり記憶の彼方に押しやられていた「ときメモGS」の話をなぜ今更持ち出してきたかというと、最近しばしば私の脳内スクリーンに、あの「ときメモGS」のパラメータが出現するからなのである。
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