元数学者のアーティストがくれた人生アドバイス
アメリカには自治体が個別に定めるゾーニング条例があり、各ゾーンで土地の用途や建築物の条件を細かく規制している。
マサチューセッツ州は全般的にゾーニングが厳しいほうだが、その中でもナンタケット島は特に厳しいことで知られている。建築物のスタイルだけでなく、外装に使えるペンキの色も限定されていて、店の看板もクオーターボードと呼ばれる昔ながらの標識や木製の地味なデザインしか許されない。
だから、島のどこに行っても、写真のような静かな景色が続く。
ところが、わが家からビーチに向かって運転していると、突然条例を無視したような不思議な風景が浮かび上がる。
しかも、5セントの人生相談テーブルまで!(まるで『スヌーピー』に出てくるルーシーだ)。
「人生相談5セント」と書かれたテーブル
「こんなに目立つ場所にゴミを置くな! 景観を妨げる」と眉をひそめる住民も少なくはないが、ここを車で通り過ぎるたびに私の気分は明るくなる。スチームパンク的な森の妖精たちが「やっほ〜。今日も元気でね!」と呼びかけてくれるような気がするのだ。彼らとかくれんぼしてみたいくらいだ。
そんな彼らを生み出しているアーティストにも一度会ってみたいと思っていた。しかし、人生相談のテーブルはいつも空だし、いたとしても「あっちへ行け!」というタイプの世捨て人という可能性もある。 わざわざ出かけていく勇気もないし、会ってしまったがために陽気な妖精たちのイメージが壊れたら嫌だ。
廃棄物から作られたアート作品
迷い続けて何年か経ったある日、新しいアートを庭に配置しているアーティストを見かけた。