—— 日本では最近『その女アレックス』などがヒットしましたよね。翻訳小説好きとしては、また翻訳小説業界がにぎやかになるといいなと思っているのですが。
渡辺由佳里(以下、渡辺) 賛成! せっかくフィクション(創作)を読むのだから、徹底的に現実とは異なる世界を味わってみてはどうかしら? というのが、私が海外小説や洋書をお薦めするウリ文句です。ファンタジーも「現実じゃない世界に行ってしまえる」という逃避が魅力ですし。
堺三保(以下、堺) そうそう。翻訳小説のおもしろさというのは、自分の身のまわりではない世界に行けることだと思うんですよ。もともとフィクションというのはそういうもので、遠い外国の地はもちろん、宇宙の彼方だって、過去の世界だって、異次元の彼方にある魔法の世界にだって行けるわけですが、翻訳小説の場合、作者が日本人ではありませんから、外国の人の視点からそれが描かれている。そのために、日本人の読者にとっては、新鮮さが二重になって立ち現れるわけです。
渡辺 そうですよね~。だから私はSFやファンタジー、大好きです。最近はマンガをはじめ日本の文学作品もどんどん海外で読まれるようになっていますが、海外に日本の小説を売り込むにしても、ふだんから海外のものを読んでおく必要ありますよね。
堺 もっと現実寄りなところでも、たとえば今話題の北欧ミステリーとかもそうですよね。
渡辺 『ドラゴン・タトゥーの女』あたりから流行ってきましたね。
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
堺 北欧ミステリーって、日本だけじゃなくて英米でも「お、ここはどこかオレの知ってる世界と違うところの話だぞ」と思われてウケてるんじゃないでしょうか。
渡辺 北欧ミステリーがアメリカで受けている理由はそこみたいですね。
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